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特別企画 スピーカーを作ろう!

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製作記2(「Mini-Rex」製作記)




 「Mini-Rex」では、共鳴管型のスピーカーを設計しようと思います。共鳴管型というと、自作スピーカーに詳しい人は長岡鉄男先生のネッシーを思い出すかもしれません。まずは、共鳴管型スピーカーの特徴について、おさらいしていこうと思います。


音の周波数[Hz]と、波長の関係

 共鳴管型は、管の共鳴を使って低音を増幅する方式です。中学か高校の物理の時間に、「管共鳴・気柱共鳴」について習ったことを覚えていますでしょうか?

「NHK 高校講座 第29回 第2編 さまざまな物理現象とエネルギー 管楽器の音を調べる ~気柱の共鳴~」
https://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/butsurikiso/archive/resume029.html

 気柱共鳴について話す前に、まず音の基本的な性質について説明をします。音には振動の状態を表す[Hz]という単位があります。これは、音が1秒間に何回振幅をするかを表す値で「周波数」と呼ばれます。例えば、周波数が10Hzの音は、1秒間に10回。周波数が100Hzの音は、1秒間に100回振幅します。

 そして、音の性質として大事なのが、音速です。音が1秒間に340m進むことは、既にご存知でしょう。これと、先の[Hz]を組み合わせて考えると、音の一振幅あたりの長さ、「波長」を求めることができます。

 たとえば、100Hzの音は、340m進む1秒の間に100回振幅するので、波長は...
   340[m/s]÷100=3.4 [m]
 と求めることができます。

 200Hzであれば、半分の1.7m。50Hzであれば、倍の6.8mですね。


片開口管と低音増幅

 気柱共鳴では、片側が閉じている「片開口管(閉管)」と、両側が開いている「両開口管(開管)」の二つが基本の形になります。

 共鳴管型スピーカーで利用するのは、「片開口管」です。理由はいくつかありますが、短い管で効率よく低音を増幅できる構造です。なお、楽器では双方の原理が使われるので、興味があれば調べてみると良いでしょう。

 片開口管では、波長の1/4の長さの管を用意することで、その音の共鳴が起こります。例えば、重低音は50Hzから100Hz付近と言われますが、それぞれ下記の計算式で、共鳴が起こる片開口管の長さが求まります。

 <50Hz>
  340÷50÷4=1.7m
 <100Hz>
  340÷100÷4=0.85m

 実際には、開口端補正を考慮するのですが、この計算が基本になります。
 片側が開いた(片側が閉じた)管を用意することで、上の計算式に基づいた周波数の共鳴が起こり、音が増幅される。これが共鳴管スピーカーの低音増幅の原理なのです。


共鳴管方式のメリット・デメリット

 スピーカーには様々な方式があります。現代のスピーカーの大半は「バスレフ型」という方式です。また、「密閉型」や「バックロードホーン型」という方式も、しばしば話題に出てくるかと思います。

 これらの方式と比べて、共鳴管型スピーカーのメリットとデメリットはどんなものなのか。次にまとめてみました。

 <共鳴管方式のメリット>
重低音を増幅する設計が、簡単にできる。
 管の長さを調整するだけで、強調する低音の周波数を選ぶことができ、簡単に設計ができます。

比較的構造がシンプルで、作りやすい。
 バックロードホーン等と比べると、部品点数が少なくできます。また、バスレフ型のように、丸穴(ポート)の加工をする必要をする必要もありません。

 ・低音の放射面積が大きく、「空気が揺れるような」低音を得やすい。
 これは、経験しないと説明しにくいのですが、空気の振動を使って低音を増強する共鳴管型は、他の方式よりも「空気が揺れるような」独特のリアリティのある低音を得ることができます。生楽器をやったことがある方は、ベースなどの低音楽器が作る「音の揺らぎ」をご存知かと思います。共鳴管型スピーカーの最大の魅力は、まさにこの揺らぎ感を作り出せることでしょう。

 <共鳴管方式のデメリット>
 ・本体サイズが大きくなる。
 同じ音域の他スピーカーと比べて、どうしても箱が大きくなります。小ささを最優先にするときには、どうしても使いづらい方式です。

 ・癖のある音になることも。
 設計を上手くやらないと、癖っぽい音が出てしまうことがあります。音の共鳴が狙った通りでないと、不必要な共鳴を生み出してしまい、高忠実度再生から離れてしまいます。今回の作例では、こうした失敗を防ぐための設計テクニックを説明していきますので、ご安心ください!


 以上が、共鳴管型スピーカーの特徴になります。歴史的にスピーカーが作られるようになってから、既に100年以上の年月が経ちますが、いまだに「完璧なスピーカー」というのは完成していません。どの方式もメリットとデメリットがあり、超高級品(いわゆるハイエンドスピーカー)を製作する技術者同士でも、どの方式を採用するかは判断が分かれるものなのです。



「Mini-Rex」のコンセプト

 さて、こうした共鳴管方式ですが、スピーカー自作の世界では長岡鉄男先生や、小澤隆久先生が数々の作例を残しています。長岡鉄男先生は、Fostex製の紙コーンを搭載したフルレンジユニットを中心に、大型の「ネッシー」、それ以外にもユニークな形状の共鳴管型スピーカーを設計されました。小澤隆久先生は、国内外の様々なユニットを使用し、測定を交えて様々な作例を発表されています。お二方の著書を以下に紹介します。

             

(左)「長岡鉄男のオリジナルスピーカー設計術[基礎知識編]」(著)長岡鉄男
  http://www.ongakunotomo.co.jp/catalog/detail.php?code=240510

(右)「作りやすい高音質スピーカー 測定とシミュレーションで高性能を徹底追及」(著)小澤隆久
  https://www.seibundo-shinkosha.net/book/hobby/19170/


 お二方の作例は素晴らしいもので、私も共感して作品の参考にさせて頂いきました。しかしながら、その作品は多くがフロア型、つまり床置きを前提としたものです。ブックシェルフ型のスピーカーが市場の大半を占める昨今の情勢とは、合わない面も出てきたのではと感じています。(小型の共鳴管型は、小澤先生がどこかで発表しているかもしれませんが...)

 「Mini-Rex」では、デスクトップでの使用を前提としたサイズに収めることを第一に設計します。また、現代的なワイドレンジ再生に対応するために、2wayスピーカーにしようと思います。
 さらに、従来から知られている技術に加え、私の製作のなかで得てきたノウハウを少しばかり入れることで、より良い音を追求していきます。


共鳴管の設計1(共鳴管の太さ)

 共鳴管型スピーカーの設計は、まず共鳴管の設計から始まります。(当たり前ですねw)
 具体的には、どのぐらいの「太さ」で、どのぐらいの「長さ」の管にするか、という所。これが決まらないと、全体イメージも固まりません。

 まず、決めるのは、共鳴管の「太さ」です。実は、これはスピーカーユニット(以下、ユニット)の大きさが決まれば自ずと決まってくるのです。私の経験則ですが、ユニットの振動板面積の3~7倍が、共鳴管の太さとして最適だと考えています。
 振動板面積とは、ユニットの振動板(丸い紙のところ)の面積のこと。その面積に対して、3倍未満だと、十分な共鳴が得られず満足のいく低音量感が得られなくなります。一方で、7倍以上にすると、共鳴は問題なく起こるのですが、これ以上断面積を大きくしても低音の音圧は増えなくなり、効果的な設計とは言えません。あくまでも経験上ですが、丁度良い面積として3~7倍、好ましくは4~6倍をお勧めします。

 振動板面積は、ユニットの公称口径から推測することもできます。8cm口径なら30cm^2(平方センチメートル)。10cm口径なら50cm^2。16cm口径なら130cm^2ぐらいの製品が多いですね。公称口径より実際の振動板の直径は小さいので、このような振動板面積になります。

 経験則では3~7倍、とりあえず中央の5倍の断面積で考えると...

 8cm口径 → 振動板30cm^2 → 管の断面積150cm^2
 10cm口径 → 振動板50cm^2 → 管の断面積250cm^2
 16cm口径 → 振動板130cm^2 → 管の断面積650cm^2

 となり、適当な共鳴管の断面積が求まります。



共鳴管の設計2(管の長さ)

 次に、管の長さを決めます。管の長さで共鳴周波数が決まることは、先に述べたとおりです。

 では、どの程度の共鳴周波数、どの程度の管の長さにするか。これも経験則があります。

 まず、長い方の限界。ユニットにもよりますが、3.5mが最大だと考えています。3.5mの場合、共鳴周波数は340÷3.5÷4=24Hz。可聴帯域の20Hz付近を十分にカバーできるスピーカーになります。しかしながら、この長さの共鳴管の場合、(イメージ的な説明で恐縮ですが)大量の空気をドライブすることになり、ユニットにも相当な能力が求められます。ユニットの能力が不足すると、モワッとした遅さを感じる低音になってしまい、あまり好ましい結果が得られません。また、3.5mということは、3.5[m]÷340[m/s]=0.0103[s]の遅れを伴った音を聴くことになるので、好ましくないという考え方もあります。

 次に、短いほうの限界。これは、ユニットの最低共振周波数「f0(エフゼロ)、もしくは fs(エフエス)」に相当する管の長さが最短だと考えています。これ以上短くなると、ユニットは低域で空振りをしてしまい、大音量では歪が生じる原因にもなります。また、そもそもf0以上に共鳴周波数を設定することは、ユニットの低音再生能力を拡張するという共鳴管の役割が無くなってしまいます。

 例えば、8cm口径ユニットでは120Hz付近がf0なので、最短の管の長さは次のように計算できます。

  f0が120Hz(8cm口径)→ 340÷120÷4=0.7m

  f0が70Hz(10cm口径)→ 340÷70÷4=1.2m
  f0が50hz(16cm口径)→ 340÷50÷4=1.7m
 


共鳴管の設計3(箱のサイズ)

 ここまでの説明で、管の断面積(最適範囲)と長さ(上限と下限)が分かってきました。こうなると、自ずと管の容量、つまり箱のサイズが出てきます。

 例えば、8cm口径ユニット(振動板面積30cm^2、共振周波数120Hz)では、以下のようになります。
 150cm^2(最適断面積)×3.5m(長さ上限)=52L(最大容量)
 150cm^2(最適断面積)×0.7m(長さ下限)=10.5L(最小容量)
 ※単位は適当に換算してください。

 もうお気づきかと思いますが、市販スピーカーで人気のあるバスレフ型であれば、容量が10Lもあれば10cmウーハーが、52Lもあれば20cmウーハーが余裕で入ります。たった8cmのユニットに対して、これだけの大容量を要求するのが共鳴管型なのです(笑)

 このことは、まさに楽器の「弦と本体の関係」に例えることができるでしょう。低音を担当するウッドベース(コントラバス)は巨大な本体を持っていますが、弦一本はとても小さなものです。弦の持つ振動を自然の共鳴現象で増幅し、量感のある低音を放つためには、相応の大きさが必要なのです。
 共鳴管型スピーカーは、まさに楽器と同じ方式で低音を増幅するので、他のスピーカーでは得られない旨味のある低音を聴かせてくれます。大きさにめげることなく、ぜひ「空気が揺れるような低音」目指して頑張りましょう!



使用するユニット Fostex PW80K, PT20K

 今回はデスクトップサイズなので、コンパクトに設計できる8cm口径のユニットで設計を進めようと思います。世のなかには様々なユニットがありますが、今回はFostexのPW80Kというユニットを使います。8cm口径ながら、振動板素材や構造はしっかりと作られています。また、ウーハーでありながら中域の解像度が高く、共鳴管型のスピーカーに最適と思い選択しました。

 このPW80Kの特性を見ると、Qts=1.08となっています。長岡氏の著書では、共鳴管型スピーカーにはQ0(Qts)が小さいユニットが好ましい、という説明があります。確かに、シンプルな共鳴管ではQ0が小さく低音がダラ下がりの特性をもつユニットのほうが好ましい結果が得られることがあります。しかしながら、共鳴管の構造を工夫することで、Q0が大きなユニットを使いこなすことも十分に可能です。とくに小口径ユニットではQ0が小さなユニットを入手することは難しく、今回の作例がユニット選択の幅を広げるヒントになれば幸いです。



(左)PW80K  (右)PT20K

 ツイーターは、FotexのPT20K。オーソドックスなソフトドーム型ながら、32kHzまでスムーズに伸びた特性が持ち味です。また、ウーハーのPW80Kとペアで開発されたツイーターで、音色の統一という点でも好ましいでしょう。



共鳴管設計の最適化

 ユニットが決まると、より詳細に共鳴管の設計をすることができます。PW80Kの基本スペックは、f0=130Hz、振動板面積 28mc^2です。共鳴管の断面積は、振動板面積から求まるとして、問題は「管の長さ」をどのくらいにするかです。

 ここで、良い指標になるのがカタログスペックの周波数特性です。これは、無響室でのデータで、ユニット素の状態の周波数特性を示したデータです。
 
  PW80Kの周波数特性

 共鳴管型では、共鳴周波数で約10dBの増幅が期待できます。逆に言えば、10dB以上の増幅がおこる奇跡は滅多に起こりません。先ほど、共鳴管の長さを3.5mにすれば24Hzが増幅されると言いましたが、ユニットからその周波数の音が出ていない限りは、その低音が(十分な音圧で)共鳴管から出てくることは無いのです。つまるところ、ユニットの低音再生能力を見ながら、適度なところに共鳴周波数を設定するのが、設計のコツになります。

 PW80Kを見るると、低域は200Hz付近をピークにダラダラと下がっていきます。200Hzのところの音圧が約85dB。そこから10dB下がったのところが80~90Hzになっています。この80~90Hzに共鳴周波数を設定すれば、共鳴周波数までしっかりとした音圧が確保できるでしょう。さらに、もう少し低い60~70Hz付近に共鳴周波数を設定しても、なだらかにロールオフする素直な低音特性で、より深みのある重低音が得られるはずです。

 今回は、共鳴周波数を70Hzに設定します。実際は60Hz付近まで再生できるはずなので、バスドラムのズシッとくる低音もしっかり表現できるスピーカーになるでしょう。この場合、管の長さは340÷70÷4=1.2[m]ですね。

 ここで再び箱容量を確認します。管の断面積を、振動板面積(28cm^2)の5倍の140cm^2とすると、1.2[m]×28[cm^2]=16.8[L] となります。デスクトップスピーカーとしては大型ですが、上手く取り回しを考えたり、管の断面積を少し減らしたりして調整しようと思います。



設計図面


 ちょっとショートカットをして、先に図面をお見せします。

  
 最終的には幅14.4cm、高さ60.0cm、奥行24.6cmというサイズになりました。デスクトップサイズですよね!?

 音響管の構造は、ユニットの部分を起点として一度上に向かい、そこからZ字状にジグザグと進み、そこからストンと後面下部の出口にむけて下がる感じです。

   

 共鳴管型ならではの設計ポイントもあれば、どのスピーカーにも共通して効くテクニックも盛り込まれています。例えば、ユニット回りをしっかり補強することや、天板を適度に鳴らすことは、他のスピーカー製作でも組み込みたいポイントです。
 
 改めて、共鳴管の構造を見ると、ユニット回りは 5cm × 12cm = 60cm^2。振動板面積の約2倍の断面積です。管の後半で一気に断面積を大きくする設計なので、ユニット近傍は細めにしました。
 ユニットから出た音は一度上に上がり、特徴的な迷路に入ります。ここの折り返し部分は、不要な中高音を減衰させる効果があります。今回のユニットPW80Kは、中低域に膨らみのある特性なので、ここで不要な帯域をしっかり削ぎ落とします!
 そして、管の断面積を一気に60cm^2から192cm^2に広げます。音響管の中央付近で大きく断面積を広げることで、共鳴を複雑化させ、癖の少ない低音増強を得ることができます。

 

 実際の板取はこんな感じ。ホームセンターで購入できる板に、「サブロク(3×6)サイズ」という板があります。1820×910mmのサイズの板で、定尺サイズとして広く流通しているサイズですね。
 「Mini-Rex」では、12mm厚の板を使います。


  ※ユニット穴やターミナル穴については、後ほど加工図面をアップします。






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