製品>SOLA Mk2(概要)
SOLA Mk2
「SOLA Mk2」
希望小売価格 360,000円(ペア・税込)
寸法:横15cm、奥行18cm、高さ40cm
特別な音を、いつもの空間に。
「SOLA Mk2」は、無垢ひのき材を使った特別なスピーカーです。MDFで作られた従来の量産スピーカーとは異なり、力強く、凛とした、美しい音を聴かせます。
いい音のスピーカーであっても、手に余るようなサイズでは意味がありません。「SOLA Mk2」は、いつもの空間に置けるようなサイズになっています。
小さな寸法に、どうやっていい音を凝縮するか。無垢ひのき材、最高級スピーカーユニット、振動制御構造...。11年間のスピーカー研究で得られた技術を総動員して、SOLA
Mk2は開発されました。
ひのきスピーカー研究の11年
<目次>
ひのき との出会い
ひのきスピーカー。あの「ひのき(桧、檜)」の材料を使ったスピーカーを、私は「ひのきスピーカー」と呼んでいます。オーディオでは滅多に使われない素材ですが、そのポテンシャルに気付いたのは今から11年前の2012年のことでした。
音の良い木材を探すために、15種類の木材を比較試聴しました。当時、アマチュアとして自作スピーカーやオーディオラックを製作しており、「音が一番いい木材って何だろう?」という素朴な疑問から始めた実験でした。
黒檀やマホガニー、メープルといった楽器に使われる素材、バーチやブナなど高級オーディオで使われる素材は、しっかりとした主張のあるいい音を奏でてくれました。
そうした銘木たちを出し抜いて、当初の想定を遥かに超える音を出してきた木材がありました。それが「ひのき」だったのです。
↑トップへ戻る
ひのき とは何なのか
密度は0.3~0.4g/cm3。手に持つとフワッと軽く、爪を立てれば跡がつくほど柔らかい。インシュレーター比較をしたときに感じたのは、ちょっぴり頼りない印象でした。
しかし、音を聴いてみると確かにいい。
低音はぶりんと脈動感に富んだ音が出てくるし、高音は固くならずに伸びやか。中高音は程よい音色感があり、原音の魅力を表現できる力がある。銘木の響きとは違って、三味線は素朴な表情で鳴らしてくれて、そこまで強い自己主張がないのも好印象でした。理屈は分からないけれど、いい音がしてる!(笑)
考え直せば、ひのきは日本を代表する木材です。伊勢神宮や法隆寺をはじめとして、国宝や重要文化財に指定される名建築には、ひのき材が使われています。しかしスピーカーに使われることは殆ど無く、木工家がたまたま製作している事例を見るのみです。
法隆寺の ひのき建築
日本の名建築にひのきが使われてきたのは、何かしらの訳があるはずです。
地震が多く、高温多湿な環境のなかで、数百年、さらには千年以上もその姿を留めることができるのは、ひのき材の優秀さゆえと考えられます。鉄よりも強いと言われるひのき材を、スピーカーで使いこなしたらきっと凄いことが起こるのではないか。音楽の本場がヨーロッパと言われて久しい中、日本人だからこそ作れる、日本のためのスピーカーが、ひのきなら作れるのではないか。そんな気持ちを持ちつつ、ひのきスピーカー作りがスタートしました。
↑トップへ戻る
部分的な採用
ひのき材をスピーカーに使いだしたのが2014年です。インシュレーターの比較試聴から2年の歳月がかかりました。ホームセンターで ひのき板材は売られていますが、スピーカー製作に使いやすいサイズではなありませんでした。また、反りが強い無垢材を使いこなす技術が当時の自分にはありませんでした。
小さな ひのき材を使って、音質を激変させる方法はないか。そんな都合の良い考えを上手く実現できたのが、「
ひのきアンカー」という手法でした。この手法を最初に取り入れた作品は「S-045 スワン・ザ・バスレフ」でした。長岡鉄男先生の「スワン型」を彷彿させる外観をもちつつ、中身はバックロードバスレフ型(BHBS)の構造になっています。
「S-045 スワン・ザ・バスレフ」と、ひのきアンカー
スピーカーユニットの背後に、ぺたりと ひのき材の木片を貼り付けるだけで、ひのきアンカーは完成します。スピーカーユニットの振動を上手く吸収するのでしょうか。音は激変し、滑らかな中高音と、しっかりとした力のある低音が表現できるようになる優れものでした。
S-045は、さらに底部に ひのき木片を3つ貼り付け、
3点支持のインシュレーターとして ひのき材を活用しています。多くの方々に聞いていただいた「ミューズの方舟自作スピーカーコンテスト」では、有難いことに音質賞を頂くことができました。
ヒノキアンカーでスピーカーが激変: はらぺこアウトドア (cocolog-nifty.com)
その後、熱心な自作スピーカー派の方が追試をして下さり、大きな効果が得られたと報告をして下さいました。ひのき材の輪が広がるのは嬉しいことですね。とても有難く思います。
↑トップへ戻る
最初のひのきスピーカー PR-83Sol
その後も、部分的な採用は散発的に行っていましたが、
本格的に ひのきスピーカーを作り始めたのは2017年でした。オーディフィルとして起業をして、どんなスピーカーをお客様に届けようかと考えた時に思い浮かんだのが「ひのき材」でした。
インシュレーターで一番だった ひのき材を全面に使ってスピーカーを作ったらどうなるのか。きっと凄く贅沢な音になるのではないか、と。
まずは、ホームセンターで買った ひのき材で試作機を作ってみたところ、その美しい木目模様に圧倒されました。音もまずまず。当時発売された伝説の限定ユニット「Fostex
FE83-Sol」の魅力も相まって、これはいけそうだなという感触を得たのです。
ホームセンターで手に入るものより、良質なひのき材はないか。有名な産地である木曽や吉野、東濃の製材所にコンタクトをとるなかで、吉野の製材所とご縁があり、最高品位の ひのき材を入手することができました。
厚みは25mm。バッフル厚は2枚重ねの50mmと、8cmフルレンジ箱としては極めて贅沢な仕様です。バスレフダクトは下部に設け、とある市販スピーカーをリスペクトする形状にしてみました。
ひのき材らしい、澄み切ったサウンドが8cmフルレンジの特長を際立たせ、一作目にして印象的な作品になりました。ボーカルは滲みなく定位し、フワッと音場が広がる。低域に鈍さは一切なく、スピード感のある低音が心地よく響きます。
「PR-83Sol」はお客様からも評判で、初めての製品ながら、多くのご感想をいただいたのも印象深いことでした。製造に難しいところがあり今は生産終了になっていますが、いずれ同じようなコンセプトの製品を作ってみたいと思っています。
お客様宅でのPR-83Sol
↑トップへ戻る
超弩級ひのきスピーカー RF-1000
伝説的なひのきスピーカーが、2016年に製作した「RF-1000」です。
16cm口径2wayのトールボーイ型なのですが、内部には3.4mの共鳴管が配されており、奥行きは70cmもあります。重量は、60kg以上ある巨漢モデルです。搭載するユニットは、パイオニア製の最高峰モデルで、TADの血統の技術が注がれた逸品です。
低音は25Hzを余裕で鳴らし、揺れるような低音から、透明で繊細な高音まで抜群のパフォーマンスを誇った作品です。知人の木工家の方に製作していただき、その材料は長い年月のあいだ自然乾燥された良質なひのき材が使われています。
共鳴管型スピーカーの内部には、その音道を隔てるための板が多く存在します。作った当初は、これが音を出した時に共振して、その対策にかなり苦労しました。いろいろ試行錯誤した挙句、アルミ材を補強材として使うことにしました。
アルミ材は、単体で使うとややシャリシャリした音になりやすいのですが、ひのき材との組み合わせではそこまで癖がでることはなく、自然な感じの音にまとまりやすいことに気づきました。ひのき材がややロールオフしたような高域の響きをもっているため、相性は良好だったのでしょう。
真空管オーディオフェアでの「RF-1000」(写真奥)
この製品(実質的なコンセプトモデル?)は、真空管オーディオフェアに出展したところ大人気でした。
和太鼓から、女性ボーカルまで、驚愕のパフォーマンスを聴かせてくれました。
しかし、全く売れなかった。一ペアも売れずに、まだ実家で眠っています(笑) スピーカー製作としては大成功だったのですが、あのサイズを部屋に入れようと思う人はいなかったようです。
↑トップへ戻る
試作機止まりだった RX-200
ひのきスピーカーで、唯一商品化しなかったのが2016年に作製したRX-200です。FostexのFF105WKを2発搭載した共鳴管型でした。
RX-200
大面積のフロントバッフルは、ひのき集成材を使っています。大型の本体から雄大な低音を出すことを狙いましたが、共鳴管の基本設計が今一つで狙ったような低音が出ませんでした。想定する販売価格と音が見合わないという理由で、残念ながら商品化には至りませんでした。
↑トップへ戻る
超小型ひのきスピーカー PR-10
大きいのがダメならば、小さいのはどうか。と思って作ったのが2017年の「PR-10」です。
ポリプロピレン振動板の8cmフルレンジを、小さなひのき箱に収めた製品です。小さいと言っても、板厚は25mmあるので、殆ど板鳴りの要素はありません。背面には小型のバスレフダクトを設け、片側を塞ぐことでチューニングを変えられる工夫がされています。
ぐっと凝縮されたような、密度感のある音像が魅力的で、非常に使いやすいモデルだったことを思い出します。特に、ボーカルをリアルに描く能力があり、普通のスピーカーでは籠ってしまいがちなナレーション再生に抜群の性能を発揮しました。
小さな筐体ゆえの使いやすが共感を呼び、販売も好調だったことを思い出します。一時期は「オーディオみじんこ」さんの店頭でも展示させて頂き、有難い経験をさせて頂きました。
ひのきの良さをコンパクトに凝縮させることを意識し始めたのはこの頃からかもしれません。
お客様宅でのPR-10
↑トップへ戻る
奇跡の名機 Concept-SOLA
いくつかの偶然が重なって生まれる名機というものがあります。2019年に発表した ひのきスピーカー「Concept-SOLA」も、その一つではなでしょうか。
2wayブックシェルフ型で、ひのきスピーカーで作れる最高の音質を追求した作品です。ウーハーユニットには、A&Cオーディオ社(現、株式会社 薩摩島津)の5cm口径ウーハーを搭載。
本格的な2wayスピーカーになった ひのきスピーカー は、最低音域から高音域まで、その響きの良さを堪能できる作品になりました。
Concept-SOLAでは、今までになかった15mmの薄い側板を使っています。外観がスリムになっただけではなく、ひのきの響きをより豊かに表現できるようになりました。一方で、
箱の頑強さが求められる低音域に対応するために、箱内部にアルミ補強材を配した設計にしています。
Concept-SOLAの内部補強
これが大成功。低音のクリアさが格段に向上したのです。
ひのき材の艶やかで凛とした響きに、透明度の高さを付与することができ、女性ボーカル曲の表現力に一層の磨きがかかりました。この後のオーディフィル製品の中身には、このアルミ補強材の構造が組み込まれるようになりました。
Concept-SOLAは、そのサイズに見合わない豊かなサウンドを再生できる、ひのきスピーカーの代表的な作品になりました。スピーカーユニットや内部構造に支えられ、ひのき材の良さを最大限に引き出すことができたのです。
とくに、生楽器やアニソンを聴かれるお客様の間で評判になり、大型の市販スピーカーを差し置いてメインシステムの座に居座ってしまうという話もよく聞きました。ひのきスピーカーとして、新たな境地を開拓できたのが「Concept-SOLA」の功績です。
お客様宅でのConcept-SOLA
↑トップへ戻る
豊かな響き TOYONE
Concept-SOLAはかなり良いモデルでしたが、やや縦長のフォルムであることが気になっていました。そこで、スピーカーの全高を最小化して設置性を高めた
ひのきスピーカーが2020年の「TOYONE(トヨネ)」です。
板厚は、全て15mm。工程の都合上、背面板はフィンランドバーチになりましたが、残る5面は無垢の ひのき材です。左右の板材には、
楽器の響板のような補強構造が取り付けられ、響きの良さを最大限に生かす造りになりました。
TOYONEの内部構造
10cmフルレンジを小さめの箱に入れた作品ゆえ、
低音は少し大人しい感じでしたが、帯域バランスはまずまず。どんなジャンルにもオールラウンドに対応する、懐深い表現力を感じさせる作品になりました。
唯一の難点は、色です。ダークブラウン色に塗装したため、展示会では「これは何の材料ですか?」と聞いてくる方が多くいらっしゃいました。ダークブラウン色だとひのき材に見えないようです。 ひのき は 素直にクリア塗装が良いのかもしれません。
ヘッドフォン祭での展示の様子
↑トップへ戻る
最新作、SOLA Mk2 誕生
2019年のConcept-SOLAから、3年が経過した2021年。まだまだ小型2wayの ひのきスピーカーとして出来ることがあるのでは?と構想をスタートさせました。
Concept-SOLAでは、ネットワークを組み込むための蓋を本体背面に作ったことで、背面の殆どがフィンランドバーチ合板になっていました。そこで、SOLA Mk2では、
6面全てを ひのき材にするために構造を一新しました。また、エンクロージュアの補強構造を最適化し、さらに低音質感を改善しました。
6面全てに無垢ひのき材を使用
ウーハー口径は、5cmから12cmに拡大し、よりダイナミックな低音再生ができるようになりました。また、ScanSpeak製の最高級ツイーターを導入し、中高音域の表現力を大きく高めています。
SOLA Mk2の開発環境
日本ならではの素材、ひのき を使ったスピーカーが、どれだけの音を奏でることができるのか。その問いに対して6年間の試行錯誤を続けてきました。「SOLA Mk2」は、自信をもって勧められる製品になったと感じており、ぜひ聴いていただければ幸いです。
↑トップへ戻る
→
【SOLA Mk2 の試聴】をする