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2-3 スピーカーの選び方
スピーカーは、オーディオシステムの中核的ポジションに位置します。
オーディオ機器選びは、まずスピーカー選びから始まると言っても、過言ではないでしょう。
ここでは家庭用オーディオで一般的な「パッシブ型スピーカー」に絞ってお話します。数多くあるスピーカーの種類のなかでも、パッシブスピーカーは選択肢が多く、高品位な製品が手に入りやすいメリットがあります。
「アクティブスピーカー(Bluetooth対応含む)」については、下記コラムをご参照ください。
「高音質を目指すためのスピーカー技術 > 06. アクティブスピーカーとパッシブスピーカー」
http://www.audifill.com/essay/eng/0_06.html
スピーカーの予算配分は?
オーディオ機器全体のなかで、どう限られた予算を分配するかは悩みどころだと思います。
例えば、予算が合計10万円だった場合、バランスよく「スピーカー4万円、アンプ3万円、プレーヤー3万円」とするのが定番です。しかし、ここでの
オススメは、スピーカーに重点的に投資して「スピーカー8万円、アンプ2万円(プレーヤーはPC代用)」とすることです。
スピーカーは他のオーディオ機器と比べて、
初心者でもアップグレードの効果を感じやすい特徴があります。特に、
ペア10万円未満の価格帯では、価格に応じてリニアに音質が変化します。他のオーディオ機器に比べて故障しにくいスピーカーには、
しっかりと予算を割いておきたいところです。
ペア10万円を超える価格帯のスピーカーは、しっかりとした再生能力をもつ製品も多く、アンプやプレーヤー(上流系)のクオリティも揃えてあげることで充実した音質を楽しむことができます。
たとえば、スピーカー15万円、アンプ10~15万円、プレーヤー10~15万円といった予算配分になるでしょうか。
スピーカーが手元にある場合は?
今まで使っていたミニコンポが壊れた、、等の場合は、スピーカーが手元に残ることもしばしば。こうした場合は、「大きくグレードアップしたいか?」「まずは修繕に徹するか」で判断が分かれると思います。
適切な予算をもってスピーカーも含めて新調すれば、音質は大きく向上するでしょう。繰り返しになりますが、スピーカーのグレードアップは、初心者でも効果を感じやすいのです。
一方で、壊れたミニコンポの機能を補完するアンプやプレーヤーを新調することでも、着実な音質向上が期待できます。セット売り製品の場合、概してスピーカーは1ランク上のものが組み合わさっており、アンプ等を新調することでその能力を引き出すことにつながります。
アンプやプレーヤーといった上流系の買い替えについては、次頁のコラムが参考になるでしょう。
スピーカー選びは、「好みのメーカーを探せ!」
スピーカー(パッシブスピーカー)は、現代の市場状況では、どの製品を選んでも機能やコストパフォーマンスに大きな違いはありません。
しかし、
各社による音色の違いは、初心者でもすぐ分かるぐらいの違いがあります。どんな音が好みなのか、どんなジャンルの音楽を聴くのかによって、選ぶべきスピーカーは変わってきます。
まずは、どんなメーカーがあって、どんなコンセプトのスピーカーを作っているのかを知るところからスタートするのが良いでしょう。
一押し! 定番スピーカーメーカー一覧
ここからは、スピーカーを選ぶ際に知っておきたいメーカー各社を挙げていこうと思います。スピーカーメーカーは星の数ほどありますが、
特に5~10万円の価格帯で、優れたスピーカーを製造しているメーカーを挙げていきます。
メーカーにはそれぞれ特徴があり、試聴して決めるのがベストですが、自分の感性にピタッとくるメーカーを探すのも醍醐味かもしれません。
また、人気のあるペア8万円前後のブックシェルフ型スピーカーの現行製品についても説明します。スピーカー選びの参考になれば幸いです。
ヤマハ
楽器で有名な日本のメーカー。オーディオやホームシアターでも盤石の地位を築いており、とくにスピーカーは楽器製造の技術が色濃く感じられる。
注目製品は、「NS-B750」。ペア約7万円。美しいピアノブラックは、まさに楽器そのもの。この価格帯では群を抜いた高級感を感じさせる。スムーズな出音が特徴で、気持ちよく音楽を聴かせる。
「ヤマハ NS-B750」製品ページへ
デンソーテン (ECLIPSE)
2017年に「富士通テン」から、現社名に変更。カーオーディオを得意とする日本のメーカー。家庭用スピーカーでは「タイムドメイン理論」を全面に押し出し、根強いファン層を獲得している。
注目製品は、「TD508Mk3」。製品群の末弟にあたるペア約12万円。タイムドメイン理論に基づく構成は、緻密な音像・音場を展開。決してワイドレンジではないが、音の存在感を丁寧に描き出すことのできる稀有な製品。
旧製品に、ペア約5万円以下の「TD307」シリーズがある。2020年現在、新品・中古共に流通している。
「デンソーテン TD508Mk3」 製品ページへ
JBL
約80年の歴史をもつ、米国の老舗オーディオメーカー。スタジオモニターシリーズを筆頭に、「JAZZを聴くならJBL」と言われるように、ホームオーディオで定番の地位を築いている。
注目製品は「4312MⅡ」。青いフロントバッフルが印象的なスタジオモニターシリーズの末弟にあたるモデル。価格はペア約8.5万円。
13cmウーハーを含む3way構成から、ちょっぴりスモーキーなコクのある音が出てくるのはJBLならでは。「JAZZ喫茶のあの音」を知る人にとっては、ぜひ一度聴いて頂きたい製品。
「JBL 4312MkⅡ」 商品ページへ
タンノイ
90年近い歴史をもつ英国の老舗メーカー。ペア70万円以上の価格帯となるPRESTIGEシリーズに象徴されるように、大口径同軸ユニットと木組みを駆使した造りがトレードマーク。
2020年に、入門価格帯のPlatiniumシリーズを発表。洗練されたデザインのなかに、どこか落ち着き感を含ませているのは老舗ならでは。
注目製品の「Platinum B6」は、ペア約8.5万円。やや大きめの本体から、朗々と鳴るボーカルが聴こえてくる。音楽の響かせ方をよく理解している造りゆえだろうか。女性ボーカルやクラシックをゆったり聴きたい人オススメだ。
「タンノイ Platinum B6」 商品ページへ
FYNE AUDIO
2017年に、元タンノイ社のエンジニアが立ち上げた、英国のスコットランドに拠点を構えるメーカー。現代的なルックスと同軸ユニットを特徴とする製品群は、優れたコストパフォーマンスを誇る。
注目製品は「F500」。価格はやや高めのペア約12.5万円だが、同社の誇る技術が存分に投じられた注目製品。同軸ユニットはもとより、低域レスポンスを高めた独自機構も注目だ。
全体として、しっかりとした低音に支えられた音域バランス。POPSのドラムの刻みも、十分な厚みを感じさせ、小型スピーカーであることを忘れさせてくれる。同軸ならではの音場感もGOOD。
「FYNE AUDIO F500」 商品ページへ
B&W
入門からハイエンドまで、幅広い価格帯で高い注目を集める、英国のメーカー。ダイヤモンドツイーターを筆頭に、高い技術力を集結した800シリーズは、ハイエンドスピーカーのベンチマーク的存在。
注目製品は「607S2 Anniversary Edition」。上位機種の技術が投じられているなか、価格は約9万円に抑えられている。モノトーンを基調としたデザインでも、虚飾を排する同社のサウンドポリシーを感じることができる。
モニター調と言われる同社のサウンドは、この607でも健在。比類のない解像度の高さが一聴して分かる。音源の良し悪し、上流系のクオリティにも機敏に反応するため、「使いこなし」を進めていく過程も楽しみだ。
「B&W 607S2 Anniversary Edition」
DALI
北欧のデンマークを拠点とするメーカー。聴く人の心を捉える繊細さとナチュラルさをもつサウンドが醍醐味。上位機種ではリボンツイーターを搭載し、弦楽器の美しさは随一。
注目製品は「OBERON3」。価格は約7万円。従来からからこの価格帯で強い同社だが、2018年の本シリーズ登場でその地位を確実なものとした。丁寧な作り込みがなされ、帯域バランスは随一。
聴感では、まさに王道のウェルバランス。過不足なく「いい音」を出してくれるのを、この価格で実現している。もう少し小さい「OBERON1」でも、この傾向は受け継がれており、設置スペースと低音再生のバランスで選びたい。
「DALI OBERON3」 商品ページへ
KEF
同軸ユニット「Uni-Q」を特徴とする、 英国のメーカー。同社の同軸ユニットは日々進化を遂げており、価格帯を問わず最新のコンセプトのものを投入している。
注目製品は「Q350」。価格は約7.5万円と、他社の同軸ユニット搭載機より手頃。本機をより小型にした「Q150」も存在する。
ユニットの素性が良いのか、音場感が広いだけでなく、粒立ちの良さ、ボーカルのサ行の優しさを併せ持っている。J-POPSやアニソンなど、優秀録音以外の音源でも粗さを気にせず聴くことができそうだ。
「KEF Q350」 商品ページへ
BOSE
言わずと知れた米国の名門スピーカーメーカー。しかし、家庭用パッシブスピーカーの開発は、2005年を境に影を潜めている。知名度の高いスピーカーメーカーであっても、それぞれに注力分野があることは理解しておきたいところだ。
職人魂! 注目のガレージメーカー。
ここからは、職人魂が光る、注目のガレージメーカーを紹介します。「ガレージメーカー」とは、規模は極めて小さいながらも、しっかりとした製品・ビジネスを展開するメーカーの総称です。
スピーカーは、数量さえ追わなければ個人でも製作が可能であり、
大手メーカーにはない個性に秀でた製品を購入できるのがガレージメーカーの魅力です。ビジネス規模から広告宣伝がしにくく、優れた製品を持ちながらも知名度が低いのも特徴。
ここでは、そんなガレージメーカーの中から、技術開発・製造力に秀でたメーカーをピックアップして紹介します。
音工房Z
大山美樹音 氏(本名 安達真 氏)が立ち上げたメーカー。長岡派としてバックロードホーンスピーカーを多数作っていたアマチュア時代の経験と、木工所で修業を積んだ実績をもとに起業。
https://otokoubouz.com/index.html
注目は、「Z1-Livorno」。キットはペア約5.5万円と安価で、作りやすい工夫は同社ならでは。完成品はペア約15万円と、コストパフォーマンスを追求している。
「音工房Z Z1-Livorno」
山越木工房
合板の曲面加工を得意とする、栃木県のメーカー。自作スピーカー派へのオーダーメイド製造にも積極的。海外製の合板が流通するなか、は、音響的にも優れた高精度な作りだ。
http://yamakoshimokkoubou.com/
注目は、「16cmバックロードホーンキャビネット」。ペア約40万円と高価だが、長岡派バックロードのなかで最高峰の完成度を誇る。Fostexの16cmフルレンジ「FE168NS」と合わせて使いたい逸品。
「山越木工房 16cmバックロードホーンキャビネット」
A&Cオーディオ
理想とする「超硬振動板」を目指し、ユニットをハンドメイドで製作するメーカー。ユニットの共振パターン「釣鐘動」に着目し、全帯域の解像度を上げる創意工夫が光る。
https://ac-audio.org/index.html
注目は、「Monitor-061」。ペア約10万円の低価格ながら、独自の技術を存分に投入できている。レジンキャスト製の曲面キャビネットは回折効果を低減し、リアルな音像と音場感を再現する。
「A&Cオーディオ Monitor-061」
オーディフィル
末席には、弊社の紹介を...
無垢木材、なかでも「ひのき材」の響きに拘ってスピーカーを製造するメーカー。無垢ひのき材の特性を生かした音作りは、高いオーディオ的性能と優しい音色の両立を特徴としている。
http://www.audifill.com/index.html
注目は「Concept-SOLA」。ペア約24万円と高価ながら、同社の小型スピーカーへの拘りを感じ取れる逸品となっている。現在、ペア10万円を切る価格帯の製品を開発中。
「オーディフィル Concept-SOLA」商品ページへ
まとめ
オーディオ選びは、まずスピーカーから、と言っても過言ではありません。予算配分を決めて、その中で個性のある各社の製品を選ぶのが良いでしょう。
定番の大手メーカーから、職人魂が光るガレージメーカーの製品まで。 幅広い視野で選んでいくのが、スピーカー選び成功の秘訣でしょう。
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