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2-1 オーディオの賢い選び方
さて、いよいよオーディオ機器の選び方についてお話ししようと思います。
どんなオーディオシステムを組むか、とても悩むかと思います。インターネットの登場で、探すことができる情報も圧倒的に多くなりました。
まずはオーディオ機器を探し始める前に、お話ししておきたいことがありますので、ぜひお付き合い下さいませ。
完璧なオーディオ機器は存在しない
限られた予算の中で、できるだけ高性能なものを…と思う気持ちがあるのは、誰もが同じでしょう。
よく「
コストパフォーマンスが高い」と言われる機器があります。「コストパフォーマンス」とは、「コストが低く安価で入手できるにも関わらず、パフォーマンスが優れている」という意味です。オーディオ界に頻出の和製英語なので、覚えておくと良いかもしれません。
さて、では、「
選ぶ機器に正解はあるのか?」と考えると、
それは「
正解はない!」と断言できます。
確かに、人気のあるメジャーな製品、コストパフォーマンスに優れる製品、評論家が絶賛する製品、webクチコミで絶賛されている製品…というのはあります。
しかし、
このオーディオ界で「誰もが推奨する製品」というのは存在しません。
どんな優れた製品、新しい機器でも、必ず賛否両論があります。
オーディオは、「リスナーの生活スタイル」「好み」「こだわり」 によって、選ぶべきものは変わってくるのです。
同じ音を聴いているのに、意見が割れる
確かに、生活スタイルが違えば、選ぶ機器が違うというのは何となくわかる話です。
しかし、
純粋に「音だけ」で選ぶとしても、「これが正解!」という選択は存在しません。
実は、【音】を他人と共有するのは非常に難しく、
各個人は
それぞれの経験や自身の感覚に基づいて、音を認知しています。
そうなると、たとえ、同じ場所・同じ時間に同じ音を聴いたとしても、
人により良否の評価は大きく変わります。
たとえば、
・評論家と素人
・オーディオマニアとミュージシャン
・ベテランと若手
・クラシック好きと、POPS好き
etc...
よく
「演奏家が推薦するオーディオ」「プロが使うオーディオ」という宣伝を目にしますが、これはただの宣伝文句です。趣味のオーディオの世界では、誰が偉いなんてことはありません。
誰かが推奨することと、自分が気に入るかどうかは別問題なのです。
本当は「これがお勧め!超最高!ドーン!」と示してくれると分かりやすいのですが、そういった
極端な宣伝や書き込みが余りにも蔓延しているように感じています。
機材の良し悪しを判断するのは、あなたです。
評論家でも、ミュージシャンでも、プロでもありません。
「相性」談義も、ほどほどに。
機材を選ぶときに避けて通れない「相性」のお話。
いわゆるオーディオ機器が、一つ一つ個性があるゆえに、「
A社のスピーカーにはB社のアンプを組み合わせるのが良い。」という話があります。これが「相性の良い組み合わせ」ということになります。
こうして、スピーカー・アンプ・プレーヤーそれぞれの個性を理解し、組み合わせることで、求める音を作り出すことができます。 まさに、オーディオの醍醐味だといえます。
例えば、
「高音が綺麗な代わりに、低音が少ないA社のスピーカー」があったとしましょう。ここに
「低音に馬力感のあるB社のアンプ」を組み合わせることができれば、その欠点を解消することができる、という話です。
このように、欠点を補いあって、価格以上の実力をオーディオシステム全体で作り出すことができます。また、短所を消すことだけでなく、長所を伸ばすための組み合わせも十分にあり得る話です。
しかし、問題はこの相性の話を
【誰が】しているか。というところです。
先ほど、
音の好みはそれぞれ、正しい選択も人それぞれ、であることをお話ししました。
自分が好ましいと感じる組み合わせと、相手が好ましいと感じる組み合わせは概して違うものです。相性談義は面白いのですが、オーディオの選択はそれだけではないということを覚えておくと良いかもしれません。
また、最近の機器は非常に性能が良くなり、
相性うんぬん言わなくても、真っ当な音を出すことができるようになりました。細かなところで個性があるのは間違いないのですが、そうした個性の問題は「使いこなしテクニック」で十分にカバーすることができると考えています。
ちなみに、
相性の話が役に立つのは、オーディオ機器を買い替える時です。「以前使っていた機器はA社だったけど、もう少しXXな方向の音に興味がある…」という時は、経験豊かなベテランが魅力的な選択肢を示してくれることでしょう。
オーディオ選びの基準は、製品コンセプト
他人の意見も、相性談義も、オーディオ選びとしては "ほどほどに" 参考にするのが良いところです。
ベストは、店舗で試聴して、自分の耳で選ぶことです。これは一番確実です。
しかし、店舗が遠かったり、あまり自分の耳で選ぶ自信がない方もいらっしゃるかもしれません。
そんなあなたにお勧めなのが、
製品コンセプトでの選択です。
製品により、その設計や開発のコンセプトは異なります。例えば、同じ価格帯でも、想定する部屋の広さや、狙っている音の表現は、それぞれの製品で違いがあります。
そうした
製品コンセプトに、自分が「共感できた」かどうかは、長く使える愛機を選ぶ基準の一つになるはずです。コンセプトは、時代が変わっても色褪せませんし、他人がどう言おうと「共感」は揺るぎない愛着をもたらしてくれます。
各メディアの読み方
これからオーディオ機器を選ぶにあたって、沢山の情報を集めていくと思います。インターネット上、雑誌、企業のカタログ、ショップでの試聴等。。。
そこで、ぜひ覚えておいて頂きたいのは、
「情報は、発信する側の意図が必ずある」ということです。
何を当たり前な…と思った方もいると思いますが、発信する側によって大きく情報が変化する、というのは十分に理解して頂きたいところです。
<オーディオ雑誌>
オーディオ雑誌では、情報を発信する側として、ライターや評論家の方がいらっしゃいます。
ここでの
発信側の基本的なスタンスとして「こんなオーディオ機器を知ってほしい」「機器の魅力を広めたい」というものがあると思います。
それゆえに、その機材の否定的な感想は書かないようにしているようにも感じます。そもそも、
機材の魅力を紹介しているのに、それに対して否定的な情報を載せてしまうとチグハグな記事になってしまうのです。
こうしたオーディオ雑誌の記事について、
八方美人、美辞麗句ばかり、企業と癒着してる、と言われることもあります。
しかし、先に述べたように「基本スタンスは、機材の魅力を広めること」であることを考えれば、悪いことは書かずに魅力を伝えるような文章になる、という事も理解して頂けるのではないかと思います。
評論家の方々は、どうすれば音の印象を読者に届けられるかを日々考えて文章を執筆していると聞いています。最近では、良い印象も悪い印象も率直に書く先生も増えてきたように感じます。
読者の我々としては、オーディオ雑誌の評論記事と、実際の試聴した印象を何度も比較していくことで、文章から音の印象を感じ取りやすくなってくるのではないでしょうか。
<インターネット>
こちらは、個人の書き手が書いている文章ですね。
先ほどと同様に「選択の一助となりたい」という気持ちもあるのは間違いないはずですが、
「自分の主張を通したい」という発信側のスタンスが強くあるのも特徴です。
それゆえに、その文章は
趣味嗜好が強く滲むもので、時には過激な内容になってしまうようにも感じます。
例えば、「今までのオーディオ機器はxxで、自分の〇〇はそれを解決できる唯一解である!」とか「A社にはB社が相性が良く、C社はありえない。」といったところです。
これが双方向の掲示板になると、共に熱い主張を持つ者同士が衝突し、余り好ましくない書き込みに発展することも散見されます。
結局、
主張があるからキーボードを叩いている訳でして、情報を発信する側というのはそれだけ熱い想いをもった人たちである、ということです。そして、自らは情報を発信しない多数派(サイレントマジョリティー)の存在があることも、インターネットを見る時はぜひ覚えておいて欲しいところだと思います。
もちろん、インターネットに個人が書き込む情報量は膨大で、非常に有益な情報であるのも間違いありません。情報をどうやって取得するか、という時代から、
情報をどうやって取捨選択するか、という時代に変わったといえるかもしれません。
<ショップ、メーカー>
これは分かりやすいですね。オーディオ機器の供給側ということで、先の例とはまた違うポジション(情報の発信者)となります。
こちらは「オーディオ機器の選択を提供する」側であると共に、
「競合に負けたくない」「シェア拡大を図る」「利潤を追求する」という側面があります。
利潤を追求、というとなんだかセコイように思えますが、
利潤の追求なしには持続的な経営は存在しません。激動する市場の中で、競合に潰されることなく生き残るのは非常に難しいことです。
利益が出せずに倒産してしまい、日本のオーディオ業界が廃れていくのは、オーディオ好きとして望ましいことではないでしょう。
例えば
「新製品のxxは、旧製品に比べてこんなにも・・・!」とか「他社にない〇〇技術を搭載!」とかいう文句は、よく見かけたことがあるかと思います。
確かにそういった宣伝文句は非常に魅力的なのですが、
自分が本当に望むものなのか?を今一度ふりかえってみてみると良いかと思います。
ちなみに、利潤追求の企業だからできることも多々あります。その一つがオーディオショウです。
広い会場を借り切って実施するオーディオショウが無料なのも、こうした企業活動ゆえなのですから、決して悪いことではないでしょう。
さて、いかがでしたでしょうか?
インターネットを探せば、「この価格帯では、コレがお勧め!」といった分かりやすい文章は沢山ありますので、この「初心者のオーディオ入門」では、地味でありながら、大切なところの話をさせて頂きました。
次回は、どうやって初めてのオーディオ機器を選ぶか?について書いていこうと思います。
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