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第21回 バックロードホーン末端の広がり処理2
前回は、ホーンの広がり率を変えての評価を行い、ホーン開口部を広げることで中低域の癖を少なくすることができました。しかし、そのぶんホーン全体の体積が大きくなってしまい、スピーカー全体の体積を考慮せざるをえない実際のスピーカー製作を反映できているとはいえない条件でした。
そこで今回は、より現実的なシミュレーションとして、
ホーン全体の体積を揃えた状態でホーン開口部の広がり方を変化させてみました。
計算の条件
前回と同じく、ホーンの後半10%をエクスポネンシャルホーンから広げていったときの状態をシミュレーションしています。しかし、前回とは異なり、ホーン全体の体積を26.1Lに揃えているため、
ホーン後半を広げるほど、ホーン前半は小さくなります。
※開口率=開口部面積/スロート断面積。 スロート断面積は40cm2。
周波数特性
開口部の面積を変えていったときの周波数特性の変化を以下に示します。分かりやすいよう、ホーン前半と後半のそれぞれのカットオフ周波数(fc)も結果に併記します。
①開口部 280cm2(fc=27Hz、27Hz)※通常のエクスポネンシャルホーン
②開口部 420 cm2、 fc=25Hz、94Hz
③開口部 560 cm2、 fc=24Hz、144Hz
④開口部 1120 cm2、 fc=20Hz、275Hz
⑤開口部 2240 cm2、 fc=13Hz、437Hz
中低音域の特性
200~400Hzの凹凸は、①→④で改善が見られました。一方で、⑤はむしろ凹凸が増えています。これは
⑤ではホーン後半のカットオフ周波数(fc)が高くなりすぎたため、ホーン開口部としての共鳴抑制効果が無くなってしまったためと考えられます。
低音域の特性
100~200Hz付近の特性は、①~③は殆ど変わりませんでしたが、
④と⑤では100Hz付近の音圧が低下するほか、180Hz付近のディップも大きくなり、特性が悪化してしまいました。
30~100Hz付近の特性は、
①~③では殆ど変わりません。その一方で、③→④→⑤では最低域のピークが若干鋭くなっているように見えますが、40Hzの音圧は76dBで変化なし、
50Hzの音圧は82dB→77dBと大きく低下しています。
これは、ホーン開口部を大きくしたとき、ホーン前半部の体積を削減せざるを得なかったため、低域を増強する共鳴管としての効果が薄れたためと考えられます。
インピーダンス特性
次に、インピーダンス特性を比較します。
①開口部 280cm2(fc=27Hz、27Hz)
②開口部 420 cm2、 fc=25Hz、94Hz ※ fc : カットオフ周波数
③開口部 560 cm2、 fc=24Hz、144Hz
④開口部 1120 cm2、 fc=20Hz、275Hz
⑤開口部 2240 cm2、 fc=13Hz、437Hz
インピーダンス特性では、①~⑤において殆ど同一の結果が得られました。
群遅延特性
最後に群遅延特性を比較します。
①開口部 280cm2(fc=27Hz、27Hz)※通常のエクスポネンシャルホーン
②開口部 420 cm2、 fc=25Hz、94Hz ※ fc : カットオフ周波数
③開口部 560 cm2、 fc=24Hz、144Hz
④開口部 1120 cm2、 fc=20Hz、275Hz
⑤開口部 2240 cm2、 fc=13Hz、437Hz
200~400Hzの群遅延は、③~④が30ms以下となりベスト。そこからホーンの広がりを大きくしても小さくしても、特性は悪化する(群遅延が大きくなる)という結果でした。
やはり
ホーン後半のカットオフ周波数が対象とする周波数より高くなってしまうと、特性の凹凸を抑えるホーン末端としての効果は薄くなってしまうようです。
30~40Hzの群遅延は、①~④が20msであったのに対し、⑤では若干大きい25msでした。①→⑤でピークとなる周波数が42Hzから35Hzまで下がっているので、それとの兼ね合いもあるので、この群遅延の値の違いがどのような聴感上の違いを生み出すかは分かりません。
まとめ
今回は、体積を一定にしてホーン末端の形状を変えてのシミュレーションを行い、次の結果が得られました。
・ホーン開口部を適度に広げた③④で、好ましい中低域結果が得られた。
・④⑤では、低音域の音圧が低下。
・シミュレーションにより、一般的なエクスポネンシャルホーン(①)より好ましいホーン形状が示された。
~続く~
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