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第12回 空気室容量を変えたときの周波数特性の変化


 前回、バックロードホーン型スピーカーS-076の空気室容量についてお話ししました。4.8L~7.2Lの空気室を試したところ、かなり聴感では違いがありました。

 では、周波数特性ではどのくらいの差が出るのでしょうか。
まずは、スピーカー正面1m(ユニット、ホーン出口双方の距離が等しくなる位置)での特性を見てみます。

<スピーカー正面1m特性>
 空気室(小)4.8L
空気室 小(4.8L)での正面1mの周波数特性

 空気室(大)7.2L
空気室 大(7.2L)での正面1mの周波数特性

 一見ほとんど違いがありませんが、細かいところで差があります。1kHz以上の中高音域の音圧を基準として、120Hz、200~500Hzの音圧が、空気室(小)の方が高く出ています。

 一方で、75Hzや180Hzの音圧は、空気室の大小ではあまり変化がありません。75Hzの存在感をより強く感じたのは空気室(大)の方だったのは、他の中低域の帯域と比べて目立ちやすかった、という理由だと思われます。


<ダクト出口特性>
 空気室(小)4.8L
空気室 小(4.8L)でのダクト出口の周波数特性

 空気室(大)7.2L
空気室 大(7.2L)でのダクト出口の周波数特性

 次に、ダクト出口(距離0cm)のところにマイクを設置して、特性をとりました。
 こちらの違いは分かりやすく、空気室(大)の方が凹凸の幅が、60~500Hzの全帯域で大きくなっています。

 バックロードホーンでの空気室の役割は、ホーンとユニットの音響的な接合を緩くすることです。効能としては、ホーンに対してハイカットフィルター(高域を減衰)として働きますが、副作用として大きすぎる空気室はホーン共鳴を助長することになります。

 試聴では空気室(大)が健闘していたように、ホーン共鳴が大きいことは一概に悪いとは言い切れません。傾向としてそのような差があるとだけ、頭に留めておくと良いかもしれません。

 空気室の大小にかかわらず、200Hz付近からハイカット(高域減衰)が効いているように見えます。これは典型的なバックロードホーンの特性でして、ホーンのハイカットは、空気室だけでなくホーン音道の折り曲げや、吸音材の複合的な効果として現れます。

 空気室が大きい方が、500Hz付近の音圧が3~5dB程度低いように見えます。この違いが空気室のハイカットフィルターとしての効果だといえるでしょう。


<ユニット直前特性>
 空気室(小)4.8L
空気室(小、4.8L)でのユニット直前の周波数特性

 空気室(大)7.2L
 空気室 大(7.2L)でのダクト出口の周波数特性

 スピーカーユニットの振動板から1cmの至近距離にマイクを設置したときの特性です。空気室(小)の方が、110Hzや180Hzのディップが鋭くなっています。

 さらに、47Hzの基音のところを見ると、空気室(小)のほうが少しだけ大きくブロードな凹になっています。空気室(大)は、少しだけ鋭角なV字になっていますね。

 先ほど説明したように、空気室の役割は、ホーンとユニットの音響的な接合を緩くすることです。ここで示したユニット直前特性でもそれが確認できた結果になりました。
空気室が小さく、振動板とホーンが密に結合している場合は、ホーンへのエネルギー伝搬が向上し、ホーン共鳴周波数でのユニットの振幅はより小さくなります。


<インピーダンス特性>
 空気室(小)4.8L
空気室 小(4.8L)でのインピーダンス特性

 空気室(大)7.2L
空気室 小(7.2L)でのインピーダンス特性

 インピーダンス特性を見るのは慣れが必要ですが、主に凹(谷)の形と位置を見ます。

 100Hz、180Hzの凹を見ると、空気室(大)の方が、より鋭いV字型をしています。これはあまり制動されていないホーン共鳴の影響をユニット振動板が受けているためです。
バックロードホーンに限らず、箱容量が大きいバスレフ型でも同じような特性になります。



 このように、空気室の違いで大きくバックロードホーンの特性は変わります。試作機をつくる余裕があれば、同じホーンで空気室容量違いを何パターンか作ってみると当たりを見つけやすいと思います。


~続く~

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