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評論/情報高音質を目指すためのスピーカー技術 >27.サブウーハー調整術

27. サブウーハー調整術

<目次>
はじめに
サブウーハー調整の3大項目
ベストな調整は、千差万別
音楽再生のためのサブウーハー調整3原則
サブウーハー調整の全体像
サブウーハーの調整① メインスピーカーの低音を聴く
サブウーハーの調整①-2 低音は「ドドン」か「ダダン」か。
サブウーハーの調整② メインスピーカーの低音を引き締める
サブウーハーの調整③ サブウーハーの音量を決める
サブウーハーの調整④ 位相を調整する
サブウーハーの調整⑤ クロスオーバー周波数を調整する
サブウーハーの調整⑥ 微調整する
まとめ



はじめに

 サブウーハーは、SW、もしくはスーパーウーハーとも呼ばれる低音専用のスピーカーで、一般的なスピーカーで再生が難しい超低音を再生するのに使われます。

 主にホームシアターやカーオーディオで使われるイメージがありますが、海外のハイエンドオーディオでは、YGAccoustics、MAGICO、アヴァンギャルド、ウィルソンオーディオのように超弩級のサブウーハーをラインナップしている著名なメーカーがあるだけでなく、ソナスファーベルやestelonの最上位製品などは、実質的にサブウーハーと呼べる帯域を受けもつウーハーを搭載しています。

 音源に入っている全ての音を表現するのがオーディオの基本です。ヒトの可聴帯域は20Hz~20,000Hzと言われていますが、20Hz付近の超低音を再生するには一般的なスピーカーとは異なる設計が必要で、それに対応するために開発されたのがサブウーハーです。

 

 しかしながら、日本のオーディオ界にとって、サブウーハーをステレオシステムに組み込むことはあまり一般的ではありません。話を聞くと、サブウーハーを追加することで低音が鈍くなる、下品な低音が出るといったイメージが根強いようです。
 これは、サブウーハーの調整が上手くできていない音を「サブウーハーの音」として誤解しているのではないかと思われます。サブウーハーは上手く使えば、オーディオシステムのクオリティを大きく底上げできるアイテムなので、毛嫌いしてしまうのは勿体ないと思います。

 

 どうすればメインスピーカーとシームレスにつながるように、サブウーハーを調整することができるのか。実際のところ、あまり明確な方法が示されていないのが現状だと思います。しばしば、「サブウーハーの調整には測定器を使う必要がある」とも言われますが、私自身、周波数特性を測りながらサブウーハーの調整をしても、なかなか上手く行かない経験をしています。

 欲しいのはフラットな特性ではなく、音楽再生において効果的かつ、聴感上違和感のないサブウーハーの付与です。いろいろ試したところ、テスト信号に頼らずに、音楽を聴きながら調整するべきだという結論に至りました。

 本コラムでは、サブウーハーの調整を誰でも簡単にできるよう方法を紹介します。最新のハイエンドサブウーハーのように自動調整機能がある機種を除けば、古今東西の様々なサブウーハーに応用できる手法だと考えています。また、サブウーハーを製作し販売している立場として、まずはこの調整で聴いてみて頂きたいという内容になっています。


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サブウーハー調整の3大項目

 

 一般的なサブウーハーには、「音量」「クロスオーバー周波数」「位相」の3つの調整項目があります。まずはこれらの役割を説明します。

 

 「音量」は、文字通り音量です。一方で、通常のボリューム調整とは少し違い、メインスピーカーとの相対的な音量を決めるためのツマミです。サブウーハーの音量は、メインスピーカーとサブウーハーの音量感が揃うように調整をします。そのため、一度調整が決まれば殆ど動かすことはありません。普段の音量調整は、今までと同じくアンプ側で行います。

 「クロスオーバー周波数」は、メインスピーカーとサブウーハーの帯域を分ける機能です。メインスピーカーもある程度は低音が出ているため、サブウーハーから重ねて低音が出ないようカットする必要があります。このクロスオーバー周波数を適切に設定することで、低音の量感はそのままに、本当に必要な超低音域だけを付与することができます。

 「位相」は、音の時間軸、波形を合わせるための調整項目です。メインスピーカーとサブウーハーの境界にあたる音域での繋がりを良くするために、必ず調整する必要があります。「正相/逆相」もしくは「0°/180°」のように、2種類から選ぶことが多いです。


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ベストな調整は、千差万別

 

 もうお気づきかもしれませんが、「音量」「クロスオーバー周波数」「位相」の3つを調整することで、サブウーハーは様々なスピーカーと組み合わせることができます。そして、最適な調整は、組み合わせるスピーカーごとに異なりますし、さらに言えば好みや設置場所によっても変わります。

 たとえば、能率が高く、低音もある程度再生できる大型スピーカーでは、サブウーハーのクロスオーバー周波数を下げ、音量を上げた調整が適正ポジションになるります。その逆に、能率が低く、低音が伸びていない小型スピーカーと組み合わせるときは、クロスオーバー周波数を上げて、音量は下げた状態で良好な結果が得られるでしょう。


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音楽再生のためのサブウーハー調整3原則

 

 ここでは、測定器を使わずに聴感だけでサブウーハーの調整を行う方法を紹介します。ただし、主観的な評価だけで調整を進めることになるので、目指す音のゴールを理解しておくことが大切です。

①メインスピーカーの邪魔をしない
 まず、意識するべきことは、サブウーハーの音がメインスピーカーの音を邪魔しないように調整することです。サブウーハーは簡単にON/OFFできるので、サブウーハーからの音が悪さをしているかどうかは簡単にチェックすることができます。とくに、サブウーハーの音量を上げすぎたりすると、メインスピーカーの音を邪魔しがちです。サブウーハーからの低音は、あくまでもそっと添えるような感じに調整するのがポイントです。

②欲張らない
 そして、低音を欲張らないことも重要なポイントです。とくに低音不足で悩んでいるときは、サブウーハーでぐっと低音を盛ろうと考えてしまいますが、それは禁物です。サブウーハーは、上の図で説明したとおり、再生帯域を伸ばすために使うものであって、帯域バランス(低音が強い、高音が強いなど)を変えるものではありません。帯域バランスを変えるためにサブウーハーを使うと、メインスピーカーとサブウーハーを広い帯域で重ねることになり、音が濁ります。

 音のバランスを整えるのは、基本的なスピーカーの使いこなしテクニックで対応すべきです。下記のページにそのテクニックをまとめましたので、もし帯域バランスでお困りの時は参考にしてみてください。

 ・低音が出ないとき

 ・低音が出過ぎるとき


③迫力より見える低音を目指す
 低音の迫力を求めてしまうと、これもつい低音を盛りがちになってしまいます。繰り返しになりますが、サブウーハーで付与するのはメインスピーカーで再生できない音域です。イメージすべきは「迫力」ではなく「見えるような低音」です。本コラムでは、低音楽器の動きや旋律が見えるような音を目指します。


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サブウーハー調整の全体像

 

 サブウーハーの調整、とくに音楽再生をターゲットとしたサブウーハー付与は、次の6ステップで進めます。

 ①メインスピーカーの低音を聴く
 ②メインスピーカーの低音を引き締める
 ③サブウーハーの音量を調整する
 ④サブウーハーの位相を調整する
 ⑤サブウーハーのクロスオーバー周波数を調整する
 ⑥微調整する&使いこなし

 次章から、各項目の詳細について説明していきます。


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サブウーハーの調整① メインスピーカーの低音を聴く

 

 まず、サブウーハーの電源をOFFにして、メインスピーカーの音を聴きます。漫然と聞くのではなく、低音の帯域・スピード感・量感といった、質的要素をしっかりと確認します。

 ここでお勧めなのが「和太鼓」の楽曲です。日本の伝統的な和楽器として有名な和太鼓ですが、大太鼓になればかなり下の帯域まで含まれており、なおかつダイナミックレンジの広い音です。再生機器の低音質感を把握するにはもっていこいの楽器です。

 サブウーハーを加える前に、メインスピーカーの低音再生能力(主に質感)をしっかり把握しておくことで、サブウーハーを誤った調整で接続した際の違和感にいち早く気付くことができます。サブウーハーの調整は、明確な指標を持っていないと泥沼に陥りやすく、「サブウーハーは良くない」という結論に至ってしまいがちです。サブウーハーがメインスピーカーの低音を汚していないか。その判別ができるようにまずはしっかりとメインスピーカーの低音に耳を傾けましょう。


 

 和太鼓の楽曲でオススメなのは、充実した低音が鳴る大太鼓が収録されている楽曲です。私は、鼓童という和太鼓グループの「暁」というアルバムに収録されている「暁」という楽曲で、サブウーハーの調整をしています。この楽曲は、CDのほか各ストリーミングサービス(Spotifyなど)でも聴くことができます。
 


 Youtubeであれば、同じく鼓童の「巴」という楽曲もオススメです。3台の平胴太鼓を叩くパフォーマンスは圧倒的な迫力があります。

 


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サブウーハーの調整①-2 低音は「ドドン」か「ダダン」か。

 

 和太鼓を聴け、と言われても、聴き慣れていないと音質の評価をするのは難しいと思います。最も簡単かつ効果的な指標は、「ドドン」か「ダダン」かです。

 プロの演奏者による和太鼓の生演奏は、「ドドン」という重ったるい音はせずに「ダダン」という炸裂するような音です。超低音成分は、ほとんど重さを感じずに体を突き抜けていきます。しかし、これをオーディオ機器で再生すると、どうしても「ドドン」という音に近づいてしまいます。

 まず、サブウーハーをOFFにした状態で、メインスピーカーだけで和太鼓を鳴らしたとき「ドドン」なのか「ダダン」なのかを採点します。これはスタート地点となる評点を決めるだけの話なので、点数の絶対値にあまり意味はありません。判断に迷うようであれば、とりあえず5点にしておきます。


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サブウーハーの調整② メインスピーカーの低音を引き締める

 

 次にやるべきことは、メインスピーカーの低音を引き締めることです。まだサブウーハーはOFFです!我慢です。

 メインスピーカーの低音が緩く、鈍い低音が出ている状態にサブウーハーを追加しても、その低音の質感は変わらないどころか一層悪くなります。当たり前ですが、サブウーハーに低音の質感を改善する能力はありません。メインスピーカーから出てくる低音(50~200Hz付近)のレスポンスを極限まで高めた状態に持っていき、そこへ低音の再生帯域を伸ばすためにサブウーハーを追加するのが成功への近道です。

 一番分かりやすい効果が得られるのは、メインスピーカーのバスレフポートを塞ぐことです。バスレフポートは、低音質感を(多少なりとも)犠牲にする代わりに、再生帯域を延ばすための機構です。その穴からは最低音域が出てきていますが、共鳴を使って疑似的に伸ばした低音であるため質感としては今一つです。
 このバスレフポートをスポンジ(台所用のスポンジでOK)で塞ぎ、密閉型とすることで、簡単に低音を引き締めることができます。低音が引き締まることと引き換えに、中低音~低音が寂しくなってしまうこともありますが、そこはサブウーハーが補ってくれます。まずは、低音の締まりやレスポンスを最優先にして「ダダン」という低音に少しでも近づくように調整を進めます。

 


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サブウーハーの調整③ サブウーハーの音量を決める

 

 ここで、初めてサブウーハーの電源を入れます。設定は、上記の表のとおり、①位相:正相 ②クロスオーバー周波数:最小(40Hzなど) ③音量:最小(0)です。

 和太鼓の曲を鳴らしつつ、徐々にサブウーハーの音量を上げていきます。ここでの音量は、普段の試聴音量と同じぐらいにします。サブウーハーの調整だからといって、特段大きい音で聴く必要はありません。

 

 和太鼓の楽曲を鳴らしながらサブウーハーの音量を徐々に上げていくと、地鳴りのような低音がサブウーハーから出てくるはずです。ある程度サブウーハーの音量を上げていくと、和太鼓の音が鈍くなり、「ドドン」に引き寄せられるポイントがでてきます。

 先ほど、バスレフポートを塞ぐなどして、メインスピーカーの低音を引き締めましたが、その引き締まった低音が緩むことのない(緩む直前ぐらい)が、サブウーハーの最適な音量設定です。「ドドン」と「ダダン」の評点でいえば、「ドドン」に2評点以上近づかないサブウーハー音量に設定します。


 

 サブウーハー音量の調整の時には、ずっとサブウーハーONで音量を調整するのではなく、サブウーハーOFFの音も確認することが大切です。サブウーハーのOFFの状態で聴けるすっきりとした瞬発力のある低音が、本来あるべき低音のスピード感であり、自分のオーディオシステムの音の原点です。その良さを損なわないような音量にサブウーハーを設定すべきです。

 和太鼓は、シンプルな楽器ですが、超低音から高音まで幅広い帯域の音が収録されています。「ダダン」という引き締まった和太鼓の低音が鳴りつつ、底力を感じるような超低域がサブウーハーで付与できていればOKです。


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サブウーハーの調整④ 位相を調整する

 

 次は位相の調整です。サブウーハーの音量はそのままで、一度クロスオーバー周波数を90Hz付近に設定します。メインスピーカーの低音と若干重なるぐらいまでサブウーハーのクロスオーバー周波数(ハイカット周波数)を上げることで、位相の正否を判別しやすくします。

 

 再度、和太鼓の曲を鳴らします。低音過剰になることもあるので、耳の負担にならない音量で試聴します。この状態で、サブウーハーの位相スイッチ「正相(0°)/逆走(180°)」を切り替えて、低音が大きく聞こえる方を選びます。


 

 この位相の正否を判別するコツとしては、サブウーハーとメインスピーカーに近寄った場所で試聴することです。スピーカーから1m以上離れた普段のリスニングポジションでは、部屋の定在波によって位相や音圧が乱されてしまい、低音の位相の判別が難しいことがあります。サブウーハーとメインスピーカーの間に頭を持っていき「正相/逆相」の双方の音を確認し、より低音が大きく聞こえる方を選びます。この確認は小音量でも大丈夫ですので、くれぐれも耳の負担にならない音量で実施してください。

 まだ厳密な調整をしていないので、低音が過剰に出ていても構いません。上記の図で示したように、位相が合っていない状態では低音音圧が少なくなりますので、それを避けることが重要です。

 もし、超小型のスピーカー(口径8cm未満のフルレンジスピーカーなど)をお使いの場合は、120Hz付近までクロスオーバー周波数を上げることで、位相設定による差が分かりやすくなることがあります。いずれにせよ、位相の確認のためには、メインスピーカーの低音とサブウーハーの低音がある程度重なる条件で試聴することが重要です。


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サブウーハーの調整⑤ クロスオーバー周波数を調整する

 

 次に、クロスオーバー周波数の調整をします。ここで聴く楽曲は、ポップスやロックなど、重低音が断続的に入っている楽曲を使います。ドラムなどの低音楽器がはっきりと録音されている楽曲であれば、どのような楽曲でも構いません。

 

 重低音が入った楽曲を再生し、クロスオーバー周波数を変えて低音(重低音)の量感が適当になる位置を選びます。やってみると分かると思いますが、クロスオーバー周波数を上げすぎるとモゴモゴとした厄介な低音がでてきますし、クロスオーバー周波数を下げ過ぎるとパンチのある低音感が得られません。ご自身の好みと試聴環境に合わせて、適宜最適値を見つけてみて下さい。

 クロスオーバー周波数がある程度決まったら、サブウーハーの位相を再度「正相/逆相」で切り替えて確認をします。低音がより自然に鳴る方が正しい位相調整です。ここでの位相調整は、最低音域の量感だけに注目するのではなく、低音の自然さや、メインスピーカーとサブウーハーのシームレスな繋がりを意識しながら位相を決定します。


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サブウーハーの調整⑥ 微調整する

 

 以上の調整で概ね問題がない調整ができていると思いますが、違和感を感じた場合は適宜微調整を行います。

 たとえば、音量を大きくしたときに、サブウーハーの音が煩く感じることがあります。これはラウドネス曲線と呼ばれる、音が大きくなるほど低音を認知しやすくなるという耳の特性によるものです。そのため、大きな音で聴く場合はサブウーハーの音量設定を若干小さくすることで好ましい結果が得られます。

 また、位相設定を正相で始めたものの、最終的に反対の逆相の方が結果が良かった場合は、改めて逆相で項目③の音量設定から調整を行うと、より適切な調整ができる可能性があります。


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まとめ

 以上が、サブウーハーの基本的な調整方法です。サブウーハーによる超低音の付与は、いままで聴こえなかった音域の音を聴くことができるだけでなく、中高音域の質感改善や音場感の拡大といった効果もあると言われています。
 今回説明した方法だけでなく、測定器を使ってより厳密に調整する方法や、オーディオアクセサリーによる使いこなし、さらには自作のクロスオーバー回路を組み合わせたりなど、様々なサブウーハーの使いこなし方法があります。ぜひ適切に調整をして、オーディオシステムの再生品質の向上を楽しんでいただければと思います。


  オーディフィル製品の紹介:
  サブウーハー SW-1



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