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第16回 FE126E 搭載バックロードSPの特性

前回に引き続き、FE126Eを搭載するバックロードホーン「S-041」について解説します。今回は、測定結果を中心に、その動作を見ていきましょう。

今回は、中央部分だけの状態なので、ホーン長は1.3m程度になります。

 FE126E搭載バックロードホーンS-041、中央部 FE126Eを搭載するバックロードホーンの側面 S-041
 中央部分のみのS-041

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搭載ユニット:FOSTEX FE126E
(口径12cm、m0:2.9g、Qo:0.25、実効振動板面積 66.4cm2)
空気室容量:2.7L or 1.9L
スロート断面積:49cm2 (スロート絞り率:74%)
ホーン広がり率:0.75
ホーン長さ: 約1.3m
開口部面積:128.1cm2 (断面積比:2.6倍)
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目次



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軸上1mでの周波数特性(1.9L空気室)

 まず、スピーカーを普段のリスニングと同じように壁際に設置し、そこから1m離れたところでの周波数特性を測定しました。

  FE126Eを搭載するバックロードホーン S-041

 1.9L空気室での軸上1m周波数特性
   軸上1mでの周波数特性

 ややハイ上がりですが、低音部には90Hzにピークが確認されます。-10dB基準では、70Hzまで再生てきているでしょうか。ホーン長さが1.3mしかないバックロードホーンとしては、比較的良好な特性が得られました。

 次に、マイクをユニット軸上から30°ずらし、同じように周波数測定を行います。

 1.9L空気室での 30°1m周波数特性 
   1m 30°周波数特性

 指向性の強い高音域がロールオフし、より聴感に近い印象の結果が得られました。バックロードホーンとしては、成功といえるのではないでしょうか。



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軸上1mでの周波数特性(2.7L空気室)

 次に、空気室を2.7Lに大きくした状態での周波数特性を示します。
 2.7L空気室での 軸上1m周波数特性
   軸上1m
 2.7L空気室での 30°1m周波数特性
   1m 30°特性

 聴感では空気室容量を大きくすることで大きな違いがありましたが、周波数特性は先ほどの1.9L空気室と殆ど変わらない結果が得られています。


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部屋の中央で測定した、軸上1mでの周波数特性(1.9L空気室)


 次に、部屋の影響を除くため、スピーカーを壁から離し、マイク位置は軸上0.5mとしてみます。

   壁から離して測定をするときの状態 壁から離した状態

 1.9L空気室での軸上50cm周波数特性
   軸上50cm特性(部屋の中央付近で測定)

 先ほどまであった90Hzのピークは無くなってしまいました。測定した部屋は6畳間だったため、ちょうど定在波と重なっていたものと思われます。

 次のグラフは、軸上から30°ずらして同様に測定を行ったものです。
 1.9L空気室での50cm 30°周波数特性
   50cm 30°特性(部屋の中央付近で測定)

 高音域がロールオフし、フラットな特性に近づきました。ただ、いずれにしても低音は出ていません。

 音道が短いバックロードホーンで低音を出すには、部屋の定在波を活用することが必要だといえそうです。バスレフ型スピーカーの場合は、定在波とダクト共振周波数が重なってしまい、低音を鈍くしてしまう定在波ですが、バックロードホーン型の場合は低音量感の確保のために定在波を積極的に活用していくことを考えた方が良さそうです。

 ※空気室容量を変えてもほぼ同じ特性だったため、2.7L空気室のデータは割愛します。


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ホーン開口部の周波数特性

 次に、ホーン開口部の周波数特性を見てみます。スピーカーを部屋の中央に設置し、ホーン開口部から3cmほどマイクを挿入して、測定を行いました。
 1.9L空気室でのホーン開口部の周波数特性
   ホーン開口部の周波数特性(1.9L空気室)

 2.7L空気室でのホーン開口部の周波数特性
   ホーン開口部の周波数特性(2.7L空気室)

 150Hz、280Hz、380Hz…と複数のピークが確認できました。2.7L空気室の方では、50Hz付近にもブロードなピークが観察されます。

 「S-041」のホーン長は1.3mであるため、片開口共鳴管として動作した場合 340÷1.3÷4=65Hz が理論上の共振周波数になります。その3倍音、5倍音、7倍音は、195Hz、325Hz、455Hzになります。実測では、若干低い周波数に出ていますので、他の特性を見ながら議論を進めようと思います。

 2つの空気室容量の違いを比較すると、2.7L空気室のほうが特性の凸凹が少し大きいことが分かります。これは、空気室が大きくなることで、ホーンとスピーカーユニットの結合が緩くなり、共鳴が起こりやすくなったためと考えられます。



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ユニット直前の周波数特性

次に、マイクをスピーカーユニットの振動板から5cmの近接距離に設置し、周波数特性を測定しました。
 1.9L空気室でのユニット直前の周波数特性
   ユニット直前の周波数特性(1.9L空気室)

 2.7L空気室でのユニット直前の周波数特性
   ユニット直前の周波数特性(2.7L空気室)

 ホーンが共鳴しているときは、振動板の動きが抑制されるため、周波数特性では凹になります。双方とも60Hz,160Hzで凹が確認されました。

 2つの空気室容量の違いを比較すると、2.7L空気室のほうが特性の凹が少し小さいことが分かります。先ほのホーン開口部の特性変化と同じく、空気室が広がったことで、ホーンと振動板の結合が緩くなったことに由来すると思われます。


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インピーダンス特性

 インピーダンス特性は、スピーカーの音響的な動作を把握するのに好適な方法です。ここでも、空気室容量が1.9Lと2.7L、双方の特性を掲載します。

 1.9L空気室でのインピーダンス特性
     インピーダンス特性(2.7L空気室容量)

 2.7L空気室でのインピーダンス特性
     インピーダンス特性(2.7L空気室容量)

 双方を比較しても、大きな差は確認されませんでした。違いがあるとすれば、1.9L空気室の方が、150Hzの凹がブロードであること、250Hzの凹が明確に現れていることが挙げられるでしょうか。

 このグラフで緑線で表した「密閉」特性は、空気室だけを取り外し密閉型スピーカーとして動作させたときのインピーダンス特性を表しています。ユニット単独(紫線)と比べて、ピーク(凸)の位置が高くなっているのは小容量の密閉箱の典型的特性です。

  バックロードホーン箱の空気室を、密閉型スピーカーとして動作させる
  バックロードホーン箱の空気室を、密閉型スピーカーとして動作させる実験




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まとめ

 今回は、1.3mのホーン長をもつ状態で、FE126Eを搭載したバックロードホーン箱「S-041」の測定を行いました。一般的なバックロードホーンスピーカーと比べて短いホーン長ではありますが、部屋の定在波を積極的に活用することで、低音の量感を得ることができることが分かりました。

 また、1.9Lと2.7Lの空気室容量でそれぞれ測定を行いましたが、聴感での印象と比べると周波数特性の変化は小さいものでした。しかしながら、ホーンの開口部特性などから、空気室容量によりホーンと振動板の音響的な結合の度合いが変化する様子が確認されました。

 

~続く~

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