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高音質を目指すためのスピーカー技術
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07. 周波数特性で音質は決まらない!?
スピーカーの特性で最もよく知られているのが「周波数特性」です。大抵のカタログには「再生周波数帯域」もしくは「定格周波数範囲」「周波数レンジ」として記載されている特性がありますが、その元となるデータになります。
具体的な例では、このようなグラフになります。20Hzの低音から20kHzの高音まで、それぞれがどのような音圧で再生できているかを記録したものになります。再生周波数帯域は、一般的に基準音圧から-10dB落ちるところを読み取った値になります。この測定例では、-20dBを基準音圧として、そこから10dB落ちたところとなる-30dBの値を読むことで、再生周波数帯域として55Hz~20kHzが得られます。
極端な例ではありますが、このような右肩上がりの状態にすると、高音が強調された音になります。つまり、この周波数特性がフラットであることが、低音から高音まで万遍なく再生できる優れたスピーカーシステム、ということになります。
しかし、忘れてはいけない大切なことがあります。この周波数特性は、非常に視覚的に理解しやすく、簡便に測定することができるメリットがある一方で、
そのデータには表れない特性が多々あるために、音質との相関を解釈するのが難しいのです。
つまり、スピーカーにおいて「高音質だから、周波数特性がフラットである」というのは概して正しいのですが、「周波数特性がフラットだから、高音質である」というのは余り当てはまらないことが多いのです。なぜなら、この周波数特性一つでは、過渡特性(音の立ち上がりや立下がり)や、指向性(スピーカー中心からずれたときの音質の変化)などの重要な要素を読み取ることができないためです。
こうした諸特性を無視した状態で、「周波数特性(だけ)をフラットにした」というのは、余り好ましい結果を生まないのです。
測定方法は日々進化を続けています。大手音響メーカーでなくても比較的高精度な測定ができる時代がやってきました。しかし、そのデータをどう解釈するかが重要だと考えています。手にした数少ないデータを頼りに一喜一憂するのでは、決して良い結果は得られません。測定をしたときには「自身の耳で聴いた感覚を、そのデータは表しているのか」を十分にチェックすることが大切なのです。
ひのきスピーカー工房「オーディフィル」として一言
オーディフィルは ひのき材の良さを前面に打ち出したスピーカーを製造しています。それゆえに楽器的なスピーカー作りで、理論はあまり重視していないと捉えられることも多いのですが、実際はかなり測定を行いながらスピーカー設計をしています。ひのきという優れた材料の魅力をどう客観的に捉え、引き出していけるかは、オーディフィルの永遠の課題かもしれません。
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