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06. アクティブスピーカーとパッシブスピーカー
スピーカーは、大きく分けて2つのタイプがあります。音量を調整するアンプを内蔵する「アクティブスピーカー」、アンプを外付けで接続する「パッシブスピーカー」。それぞれどのような特徴があり、どちらが高音質なのか考えてみたいと思います。
アンプとは
スピーカーは大きな音を出すために、沢山の電力を消費します。そのためには、
大きな電力を生み出せる「アンプ」を使う必要があります。
例えば、スマートフォンにイヤホンを繋いだ状態では、スピーカーのような大きな音は出ずに、シャカシャカと鳴るだけですよね?これがアンプが無い状態です。(正確にはイヤホン専用の小出力アンプが内蔵されています。)
ではそのイヤホンを外すと、スマホ内部のスピーカーが機能して大きな音が出ます。スマートフォンの中に入っているアンプが機能し、スピーカーを鳴らすように切り替わるためです。それでも、スマホ内蔵のスピーカーでは、その音量や音質に限界があるのはご存知だと思います。スマホの中に搭載できる超小型のアンプとスピーカーでは、外付けの製品ほどのクオリティーが出せないのです。
話を整理すると、
大きな電力を生み出せるアンプは、スピーカーで大きな音を出すのに重要なアイテムです。普及している製品の中には、超小型のアンプが搭載されていることが多いために存在感が薄いのですが、高音質な音をスピーカーで楽しむためには別途用意してやることが必要なアイテムなのです。
アクティブスピーカーとは
アクティブスピーカーは、この
アンプをスピーカーに内蔵するタイプです。最近のBluetoothスピーカーや、イヤホン端子に挿して使えるPCスピーカーの大半は、こちらに分類されます。スピーカー本体に音量調整のツマミや、電源コンセントに繋ぐためのケーブルがあるのでも判断できますね。
パッシブスピーカーとは
パッシブスピーカーは、
外部のアンプを接続して使うタイプのスピーカーです。例えば、ミニコンポ用のスピーカーは、ミニコンポの本体(アンプ)側に音量調整のツマミがあり、スピーカー側にはそうしたツマミは無いはずです。スピーカーは、本体側に入っているアンプから、1本のスピーカーケーブルで接続されます。
アクティブスピーカーのメリット
アンプとスピーカーが一体型になっているため、
①設置が容易、②コストパフォーマンスに優れる、③メーカーが意図した音を実現しやすい というメリットがあります。
①アクティブスピーカーには、高効率なアンプが内蔵されることが多く、スピーカー本体のサイズはパッシブスピーカーと余り変わらないことが大半です。アンプを内蔵しているお蔭で、そのままパソコンなどの再生機器に接続することができ、
煩雑な配線が不要になります。音楽制作などのプロ用機材でもアクティブスピーカーが重宝される理由の一つに、この設置の容易さがあるのではないでしょうか。
②オーディオ機器は、外側の筐体(シャシーとも呼ばれます)を作るのにもお金がかかります。とりわけ、視覚的な美しさと音質の両立が求められることで、高コストになりがちです。アクティブスピーカーは、
アンプとスピーカーが一体化しており、そのぶんコストダウンすることが可能なのです。
③アンプはスピーカーと同じく、それぞれ製品固有の音を持っています。スピーカーに組み合わせるアンプを選ぶことは、オーディオの楽しみの一つです。しかし、必ずしもスピーカー設計者が意図した音が出る組み合わせになるとは限りません。とりわけ、音楽制作のようなリファレンス(基準)としての役割が求められる
モニタースピーカーでは、アンプとスピーカーがセットになったアクティブスピーカーが多く使われます。
パッシブスピーカーのメリット
一方で、パッシブスピーカーにも
①家庭用オーディオ機器との親和性が高い、②グレードアップや買い替えがやりやすい、③自分の求める音を作れる、というメリットがあります。
①家庭用オーディオ機器の殆どが、アンプとスピーカーが別になっています。これは、オーディオの進化の歴史が「家具調ステレオ」という初の大衆向けオーディオ機器から、より音質の向上を目指して「コンポーネント」に変化したということ基づいています。
昔は一体だったものを、別々の筐体にいれて、それぞれで最適な設計をする。こうした
コンポーネント思想のもと、家庭用オーディオは進化してきました。これは決して古いだけの考えではなく、音質を最優先に考えるには好ましい選択だといえます。
前置きが長くなりましたが、こうした歴史的背景もあり、家庭用のオーディオ機器にはパッシブスピーカーを前提とした製品が市場に多数存在しており、結果的に高音質な製品が多数存在しています。
②アンプとスピーカーが別々であれば、どちらか片方をグレードアップして音質の向上を計ることができます。アンプを買い換える理由は、音質の改善だけでなく、接続機器を増やせるなどの機能的な観点もありうるでしょう。こうした
オーディオシステムの更新に柔軟に対応できるのはパッシブスピーカーの良さだと言えます。
③オーディオの醍醐味は、
自分の求める音を作ることでもあります。音が良いと言っても、感受性や好みは人それぞれで、一昔前のようにHiFi再生のみが答えでは無くなってきています。補足すると、測定器で測れる中で十分に原音忠実である中でも、その微妙な音色の差異がオーディオ機器選びの中心となっています。
アンプとスピーカーを別々に選べるパッシブスピーカーは、
双方の組み合わせ方で無数の音色を作り出すことができます。
ハイエンドオーディオの動向
家庭用オーディオの最高級品であるハイエンドオーディオでは、スピーカーの多くがパッシブ型でした。一部の製品は、ウーハーのみを駆動する専用のアンプをパッシブスピーカーの中に格納したりと、双方の良いとこ取りを狙う構成になっています。
今後は、無線で音楽信号を飛ばすケーブルレスタイプのアクティブスピーカーが増えてくるのでは、という推測もあります。高級品は高音質であることに加え、「長いケーブルが邪魔」というラグジュアリー層のニーズに応えるための製品が求められているためです。
まとめ
現代の高級オーディオの主流はアンプが外部にあるパッシブスピーカーです。しかし、アクティブスピーカーも徐々に注目を集めており、今後市場が変化するかもしれません。
両者は使い勝手の面で大きな違いがありますので、ご自分の求める使い方にマッチするものを選ぶのが良いでしょう!
ひのきスピーカー工房「オーディフィル」として一言
オーディフィルでは、
専らパッシブスピーカーを開発しています。
アンプは他社様の優れた製品を、お好みに応じて選んで頂くのが良いと思っており、今後もパッシブスピーカーを主軸にスピーカー製作をしていくつもりです。
その一方で、近年は「PCとのUSB接続」や「スマホとのBluetooth接続」をお求めのお客様も増えてきているため、今後、何かしらの提案ができればと思っています。
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