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04.トールボーイ型とブックシェルフ型


 現代のスピーカーは、そのサイズに応じて「ブックシェルフ型」と「トールボーイ型」が主になっています。本棚に置けるような小さいサイズのスピーカーを、ブックシェルフ型。背が高く、床に直接設置するスピーカーが「トールボーイ型」と呼んでいます。

<大型スピーカーとブックシェルフ型>

 歴史的に言えば、本格的なスピーカー=大きなもの、という時代がありました。上位モデルになると30cm口径、40cm口径の大きなウーハーを搭載していました。
それに対して、16cm以下ぐらいの小さな口径のウーハーを搭載し、本棚にも置けそうなサイズのスピーカーを「ブックシェルフ型」と呼ぶようになりました。


Technics1(テクニクス)
(写真)Technics(パナソニック)〈1〉技術に立脚した開発 | 電波新聞デジタル

1965年に発売された「Technics1」は、12cm口径ウーハーをもつ2wayスピーカーです。開発者は、石井式リスニングルームで有名な石井伸一郎氏と、「8PW1」(通称「げんこつ」)を開発した阪本楢次氏。

小型ブックシェルフ型スピーカーの製品化は英国グッドマン社に先行されたものの、小型スピーカー設計についての論文発表では石井氏が先だったようです。

同時期に30cm口径ウーハーをもつ「Technics2」も開発されます。その製品発表会のメインに据えるスピーカーを、小型の「Technics1」にするか、大型の「Technics2」にするかを熟慮したという話が残っています。
(参考)今、振り返る「Technics」誕生秘話。創設者の一人、石井伸一郎氏に聞く - AV Watch


その後、1969年のステレオサウンド誌(10号 1969 Spring)には、「大型システムに挑むブックシェルフ型」「ブックシェルフ50機種の目かくしテスト」として特集が組まれるなど、その注目度を伺わせる内容になっています。



<トールボーイ型のはじまり>

トールボーイ型スピーカーは、いつから注目されるようになったのでしょうか。

幅の狭いフロア型のことを「トールボーイ型」と現在では呼んでいますが、比較的古い年代のものでは1973年に発売された英国CELESTION社「DITTON66」などがあります。

 
 (写真)DITTON 66 CELESTION - 中古オーディオ 高価買取・販売 ハイファイ堂

その一方で、1970~1980年代に日本のオーディオ市場を賑わせていたのは、大型のブックシェルフ型でした。 1974年のヤマハ「1000M」に始まり、ダイヤトーン、パイオニアを筆頭に、30~40cm口径のウーハーをもつ3wayタイプのスピーカーを数多く発売されました。


1980年代後半にはLDの登場と共に、高品位な音と映像を楽しむニーズが出てきました。それまでテレビやビデオテープこそありましたが、好きな作品を好きな時に鑑賞でき、高品位なデジタル音声が収録されている映像ソフトというのは、大きな変革だったのです。

1988年には、映像機器も積極的に開発をしていたパイオニアから「S-700T」というAV環境をターゲットにしたトールボーイ型スピーカーが発売されます。 同時期にドルビー・プロロジック回路搭載AVステレオプリメインアンプ「VSA-900」、センタースピーカー「S-XC1」も登場し、ホームシアターの時代の幕開けを感じさせる動きだと言えるでしょう。

同じく1988年には「S-99TWIN」、翌年の1989年には「S-1000Twin」がそれぞれ発売。トールボーイ型の高級スピーカーとして注目されました。

(参考)1980年~1989年 | 年代別事業年表 | パイオニアの歴史 | Pioneer


   
  (左)S-700T、(右)S-1000twin

  (写真)Pioneer S-1000twinの仕様 パイオニア
  (写真)Pioneer S-700Tの仕様 パイオニア




<DVDの登場とトールボーイ型>

そして、1996年頃のDVDの登場により、その流れは加速します。 当時、多くの家電量販店には主要メーカーのホームシアターシステムが展示されれ、そのフロントスピーカーとしてトールボーイ型スピーカーは重宝されました。 デノン「SC-T777SA」、オンキヨー「D-602F」、ヤマハ「NS-300」など、AVアンプやDVDプレーヤーと同時期に開発された製品も多くありました。

そして、トールボーイ型スピーカーは、単なるAV用スピーカーという扱いではなく、オーディオ雑誌でも高い評価を得るようになったのです。たとえば、B&W「ノーチラス804」、ビクター「SX-L7」、パイオニア「S-1EX」が挙げられるでしょう。


   
 左から、Nautilus804(B&W)、SX-L7(ビクター)、S-1EX(パイオニア)



さらに2000年代後半には、10cm未満の小口径ウーハーを4発程度搭載したスピーカーも登場します。私は「ペンシル型」と呼んでいますが、明確な呼称は無いようです。

BOSE「55WER-S」、デノン「SC-T7L2」など脚光を浴びるモデルもありましたが、その後は新製品が大きく注目されることはありませんでした。 これは推測ですが、極端な省スペース化と音質の両立が困難であり、顧客の思い描く高音質オーディオ像と一致しなかった、さらにはヘッドフォン・イヤホンに開発がシフトしたという理由があったのでしょう。

  
 (左)BOSE 55WERを含むセット、(右)DENON SC-T7L2

(写真)BOSE、ペンシル型スピーカー55WERの小型版「33WER」 (impress.co.jp)
(写真)デノン、スピーカーシステム「Lシリーズ」など5製品 (impress.co.jp)




<「ウーハー×2」の基本的な意味>

トールボーイ型スピーカーでは、ウーハーを2本搭載することが多いと思います。ここでは、同じウーハーを2本搭載する理由を、改めて考えてみたいと思います。

ウーハーを2本装着することのメリットは、1本あたりの負荷の低減です。 低音は特に振幅が大きく、ユニットの歪を招きます。つまるところ、1本より2本の方が、同じ音量を低歪みで再生できるのです。


<ウーハーの数より、箱の容量>

しかし、この考え方だと、単に音量が稼げるという意味になってしまいます。おそらく、皆さんの感覚として「トールボーイ型は低音の再生下限が伸びる。重低音がしっかり出る。」と感じているはず。これを理解するには、もう少し技術的な解説が必要です。

まず、箱の容量ですが、ブックシェルフ型と比べてトールボーイ型は大きな箱容量を持っています。おそらく、2倍ではなく、3倍近い容量になるのではないでしょうか。高さ40cmのブックシェルフ型と、高さ120cmのトールボーイ型スピーカーでは、設置面積が同じとして単純計算で3倍です。

箱というのはスピーカーの動作にとって非常に重要な役目を持っています。箱は単にスピーカーユニットを固定する為だけではなく、低音を積極的に増幅するために必要不可欠なものなのです。


<バスレフ型と箱容量>

「バスレフ型」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。 ダクトの共振を利用して重低音を増幅する方式で、現在の市販スピーカーの大半が採用しています。この方式では、箱の容量が低音の増幅量を決めるカギになります。箱の容量が大きいほど、より大きな共振が得られ、重低音を効果的に増幅することができます。

つまり、トールボーイ型は、箱の容量にゆとりをもって設計することができるために、十分な低音再生が可能なのです。多くのオーディオマニアは、低音はユニットから出ていると考えているようですが、実際は低音(特に重低音領域)の大半は箱(バスレフダクト)から出てきているのです。


<どうして、ウーハーは2本?>

重低音を決めるのは箱の容量だと言いました。しかしながら、スピーカーが出せる最大の音量が、ユニットの口径で決まってくるのも事実です。ブックシェルフ型に比べて、比較的大きな部屋で使うことが想定されるトールボーイ型は、より大きな音で再生することを前提にスピーカーを設計します。

先ほど、『「ウーハー×2」の基本的な意味』でお話した通り、小口径のウーハー1本では大音量で歪んでしまい、好ましくありません。また、ウーハーの負荷が減ることで、より低音を重視した音作りのウーハーを搭載することもできるのです。


<トールボーイ型とブックシェルフ型のどちらが良いか?>

低音再生でいえば、間違いなくトールボーイ型です。しかし、家庭用オーディオでは設置場所の雰囲気との兼ね合いや、試聴距離に対して適切なサイズを選ぶ必要があり、ブックシェルフ型を選ぶ選択肢も十分にあると思います。
特に、サイズが小さいブックシェルフ型は比較的安価に製造することができるため、同じ予算であれば上位ラインのスピーカーを選ぶこともできるかもしれません。


<こんな人にはトールボーイ型がオススメ>

・比較的大音量で音楽や映画を聴く
・体に感じるような重低音が欲しい
・8畳以上の大きな空間で聴く

<こんな人にはブックシェルフ型がオススメ>

・小音量で高品位な音を目指したい
・8畳未満の小さな部屋で聴く
・スピーカーから2m以内の距離で聴く


<ブックシェルフ型でも低音が欲しい場合は?>

低音ではトールボーイ型が有利、という話をしました。 しかし、試聴距離を考えるとブックシェルフ型が好ましく、それでも低音に拘りたい...という場合はどうすれば良いでしょうか?

ズバリ、「サブウーハー」の追加がお勧めです。Fostexの「CW250D」や、オーディフィルの「SW-1」など近年は音楽再生にも好適なサブウーハーが発売されており、それらを使うのが好ましいでしょう。

   

      音楽再生に好適な、小口径サブウーハー
      オーディフィル「SW-1」





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