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1-01 バックロードホーンの特徴と魅力


   バックロードホーンの特長

「バックロードホーン型スピーカー」。
オーディオをやっていると、どこかで耳にする言葉です。 しかし、メジャーな方式ではなく、自作スピーカー派の間で製作事例があるのみで、知名度はまだまだ低いものです。

ここでは、そもそもバックロードホーン型とは何か。他のスピーカーとは何が違うのか。どんな音がするのか。そうした疑問に答えていこうと思います。



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ホーン型とは

ホーン型スピーカーは、様々な場所で見かけると思います。JBLの大型スピーカー「スタジオモニターシリーズ」には、ホーンを搭載した機種が多くあります。

 たとえば「JBL 4367」では、コーン型のウーハーの上部にホーン型のツイーターが組み合わされています。このツイーターのホーンは「フロントロードホーン」に該当します。
フロントロードホーン型スピーカーの図
こちらの図のように、フロントロードホーンでは、ツイーターの前面側にホーンが装着されています。一般的な「ホーン型」は、この「フロントロードホーン」になります。

ホーンの音の魅力は、何と言ってもトランジェント(応答)の良さではないでしょうか。
音の立ち上がり、立下りをキレ味よく、かつ浸透力のあるリアルな音で聴かせてくれるのは、ホーンならではの表現です。ジャズのドラムやシンバルの瞬発力、手を伸ばせば触れられそうなボーカルの立体的な音像感。これらの音は、ホーン型スピーカーの真骨頂だと思います。


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低音にもホーンを付けられるのか?

ホーンが魅力的な音を出すことは、上記のとおりです。
しかし、市販スピーカーを見ると、高音を担当するツイーターにはホーンが付いていても、低音を担当するウーハーにはホーンが付いていないことが多いのです。

これは、ホーンというものは音の波長に対応するサイズが必要で、高音域(波長が短い)では家庭サイズのホーンが作れるのに対し、低音域(波長が長い)では非常に大型のホーンになってしまい家庭での実用性に乏しいという問題があるのです。

 オールホーン型スピーカーの図

家をまるごとコンクリートのホーンで作ってしまうようなケースもありますし、アバンギャルド社の「TRIO XD」のような数百万円のハイエンドスピーカーも、オールホーン型の一例になります。


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フルレンジ+低音ホーン=バックロードホーン

先に上げた「オールホーン型」は、各々のホーンが得意とする帯域が狭いために、3way~5wayといった複雑なシステムにならざるを得ないという欠点もあります。 そうなると、我々のような個人のスピーカービルダーが気軽に低音ホーンの音を楽しむというのは難しくなってしまいます。

それでは、ホーンを低音だけに使い、他の帯域はフルレンジユニットで再生するのはどうでしょう?
どうせなら、フルレンジの背面からの音を活用すれば、さらに合理的です。

バックロードホーン型スピーカーの図

コーン型のスピーカーユニットは、振動板が前後に動いて音を出すため、我々が耳にする前側の音とほぼ等しい音が後ろにも出ています。この「後ろ音」をホーンで増幅するのが「バックロードホーン」です。


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バックロードホーンの音の特徴

バックロードホーン型の音の特徴は、音の開放感・生々しい表情だと言えるでしょう。なかには、瞬発力やスピード感だと言う方もいらっしゃるかもしれません。一言でそういわれてもイメージしにくいと思いますので、もう少しその特徴を文章で説明しようと思います。

低音がホーンから放出されることで、普通のスピーカーでは籠ったように聴こえてしまう低音が、解像度高く聴こえるのは驚くと思います。JAZZのドラムのダン!と鳴るのが遅れることなく鮮度を保ったまま体に直撃してきます。ウッドベースも、ぼんやり鳴るのではなく、ゴリゴリと骨格を感じさせる鳴り方になります。

バックロードホーン型を愛用していらっしゃる方と話をすると、スピード感や解像度の高さに特徴があるという声も聞きます。ストリングスの音がボヤけることなく旋律が明確に聴こえる。打楽器の一発の打音のキレ味が際立つ、といった所でしょうか。

私は、バックロードホーン型と一般的なバスレフ型のスピーカーの双方を作製しますが、バックロードホーンの魅力は、楽器ライクな発音原理に由来する豊かな鳴りっぷりだと思っています。
バックロードホーンの図面を見て、チューバやホルンを連想した方もいらっしゃるのではないでしょうか。そうした楽器の生演奏を間近で聴くと、楽器から出た音が空間全体に芳醇に広がる様を体感するかと思います。
バックロードホーン型のスピーカーが鳴り始めると、空間が音包まれたように響き始めます。とくに、空気が震えるような低音表現は、その場に生楽器があるのではと錯覚してしまう程です。
これらは他のスピーカーでも調整次第で到達できることですが、バックロードホーンの音はそれを簡単に実現できる不思議さがあります。


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どうして市販スピーカーに少ないのか

バックロードホーンは、市販スピーカーのなかでは少数派です。その理由としては、①スピーカーの口径に対して大きな本体になる、②音の好き好みが分かれる、③構造が複雑で量産するのが難しい、といった理由が考えられます。

①スピーカーの口径に対して大きな本体になる
ホーンの構造上、どうしてもバスレフ型より大きな本体になってしまうのです。いま小型スピーカーの大半が採用するバスレフ型は、非常にコンパクトで低音を下まで伸ばすことができます。その一方で、ホーンを基本構造とするバックロードホーン型は、(同じサイズで比較すると)どうしても低音の下の方が弱くなってしまいます。
同じ低音を出すのに、より大きな体積が必要なのは今一つに思うかもしれません。しかし、大きな本体から放たれる低音はまさに「楽器的」。ウッドベースや大太鼓の大きな本体から出る、エネルギー感のある低音を再現しやすいのもバックロードホーンなのです。

②音の好き好みが分かれる
バックロードホーンは周波数特性に凹凸が表れやすく、それをクセと感じる人も多いためです。確かに、コーン裏側の音(逆位相)をリスナー側に持ってくるバックロードホーンは、少なからず周波数特性の凹凸が生じる傾向があります。
しかしながら、周波数特性のフラットさと優れた音であるかは別問題と考えた方が良いでしょう。たしかに、特性がフラットな音は万人が好む傾向がありますが、それとリスナー個人の好き好みは一致しないことが多々あります。燃費が良くてコンパクトな車はよく売れるけれど、それと欲しい車が一致するかは別問題です。
例えば、老舗スピーカーメーカーTANNOYの最上級モデルWestminster Royal/GR」はバックロードホーン型で、その下位モデルはバスレフ型を採用しています。


③構造が複雑で量産するのが難しい
バックロードホーン型が大きく長いホーンを折りたたむ必要があるため、中身が複雑になる傾向があります。大手のスピーカーメーカーでは、何千本、何万本のスピーカーをいかに効率よく製造するかがコストダウンに効いてきます。複雑な構造のバックロードホーンの量産は、コスト面で不利になりやすいのです。
一方で、個人が経営する小規模なメーカー(ガレージメーカー)では、優れたバックロードホーンが発売されています。また、自作キットとして、安価に供給してくれるメーカーもあります。
数で稼ぐ商売は難しいバックロードホーンですが、探してみるとコストパフォーマンスに優れる製品も多いことが分かります。フルレンジを主軸にするバックロードホーンは、電気的な部品点数が少なく、少量で生産するのであれば決して高価にならないのです。

(バックロードホーンの市販品やキットは、別章で説明します)




  

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